北九州工業地帯

北九州工業地域の変遷と現状

北九州工業地域は、福岡県北九州市を中心とする地域に広がる工業地帯であり、かつては日本の四大工業地帯の一つとして名を馳せていました。しかし、近年では他の工業地帯と比較して生産額が低下し、その呼称も「工業地域」へと変化しています。この地域は、歴史的に見ると、1901年に設立された官営八幡製鐵所（現在の日本製鉄の源流）を契機に、石炭資源と港湾立地を背景に発展を遂げました。

北九州工業地域の成り立ち

北九州工業地域の発展は、筑豊炭田や宇部炭田から産出される石炭と、中国大陸からの鉄鉱石輸入に最適な港湾という地の利に恵まれていました。これらの資源を基に、製鉄業、化学工業、窯業、造船業、機械産業などが発展し、一大工業都市へと成長しました。特に、日本製鉄九州製鉄所（旧八幡製鐵所）を中心とした鉄鋼業は、この地域の工業を牽引する存在でした。

しかし、エネルギー革命による石炭から石油への転換や、鉄鉱石の輸入先の変化などにより、炭田は閉山し、鉄鋼業は衰退しました。2000年代前半には、製造品出荷額で他の工業地域に抜かれ、かつての勢いは失われました。

現在の北九州工業地域

かつての重厚長大産業に代わり、現在では自動車産業が地域の主力となっています。日産自動車九州やダイハツ九州などの自動車メーカーが生産拠点を構え、九州北部全体の自動車生産台数を押し上げています。福岡県内の製造業出荷額構成比においても、自動車等の輸送機械が大きな割合を占めています。また、内陸部では石灰石を産出し、セメント工業も発達しています。

さらに、九州地方は「シリコンアイランド」と呼ばれるほど半導体産業が集積しており、北九州工業地域にも関連工場が存在します。

北九州学術研究都市

北九州工業地域には、北九州学術研究都市があり、産官学連携による先端科学技術の研究開発が進められています。特に、自動車の電子化に対応するため、カーエレクトロニクスコースを設けるなど、産業界のニーズに合わせた人材育成にも力を入れています。

この学術研究都市には、早稲田大学大学院情報生産システム研究科や北九州市立大学国際環境工学部など、多くの教育・研究機関が集積しており、アジアの中核的な学術研究拠点を目指しています。

呼称の変化

かつては「工業地帯」として認識されていた北九州ですが、製造品出荷額の低下やエネルギー構造の変化に伴い、近年では「工業地域」として扱われることが一般的です。これは、他の三大工業地帯（京浜、中京、阪神）と比較して、生産規模が大幅に縮小したためです。

主な都市と事業所

北九州工業地域には、多くの都市と事業所が存在します。

山口県: 宇部市、山陽小野田市、美祢市、下関市。
化学、機械、セメント、繊維製品、半導体、窯業など。
福岡県: 北九州市、苅田町、宮若市、直方市、行橋市、豊前市、吉富町。
化学、金属、ゴム製品、自動車、食料品、鉄鋼、電機、窯業・セメントなど。
大分県: 中津市。
自動車、半導体など。


これらの都市には、各分野の大手企業が工場や事業所を構え、地域経済を支えています。

主な理工系の高等教育機関

北九州工業地域には、多くの理工系の高等教育機関が存在し、地域産業を支える人材を育成しています。

高等専門学校: 宇部工業高等専門学校、北九州工業高等専門学校
国立大学: 九州工業大学工学部・情報工学部、山口大学理学部・工学部
国立大学大学院: 九州工業大学工学府・情報工学府・生命体工学研究科、山口大学理工学研究科
公立大学: 北九州市立大学国際環境工学部、山陽小野田市立山口東京理科大学工学部
公立大学大学院: 北九州市立大学国際環境工学研究科、山陽小野田市立山口東京理科大学工学研究科
私立大学: 近畿大学産業理工学部、西日本工業大学工学部
* 私立大学大学院: 早稲田大学大学院情報生産システム研究科、近畿大学産業技術研究科、西日本工業大学工学研究科

これらの教育機関は、地域産業との連携を深め、産業界のニーズに合った教育・研究活動を展開しています。

まとめ

北九州工業地域は、かつての四大工業地帯としての地位は失いましたが、自動車産業を中心とした新たな産業構造を構築しつつあります。学術研究都市の存在も、今後の発展に重要な役割を果たすと考えられます。この地域は、過去の栄光に甘んじることなく、常に変化に対応しながら成長を続けている地域であると言えるでしょう。

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