北前船主の館・右近家

北前船主の館・右近家

福井県南条郡南越前町河野には「北前船主の館・右近家」があります。これは、北前船の歴史やその重要性を知ることができる町立の資料館です。元々、北前船主である右近権左衛門家の旧宅を改修し、同家から寄託された様々な資料を展示しています。1989年に開館して以来、この施設は地元の歴史的資産として多くの訪問者に親しまれています。

右近権左衛門家の歴史

右近権左衛門家は、江戸時代初期の延宝8年（1680年）に設立されました。この家系の起源は、河野浦の金相寺だったと言われています。様々な領地をもつ寺の住職が、その弟を養女と縁組させ、田畑や山林、さらには船一隻を与えたことで分家が始まりました。右近家の船は、河野浦の他の商人たちと同様に、松前や敦賀を結ぶ日本海での貿易を行っていました。

18世紀の半ばからは、右近家は単なる荷所船の経営者にとどまらず、自ら商品を仕入れ販売する商業活動にも進出しました。特に、文化13年（1816年）に生まれた9代目の右近権左衛門によって家業は大きく発展しました。彼は従来の廻船に加え、知人や商取引のあった大阪の業者と共同で船の経営を行い、船の数を増やしていきました。

この成長は著しく、嘉永6年（1853年）には3隻を持ち、約1600両の利益をあげていた右近家も、文久3年（1863年）には11隻を所有し、利益は1万2000両を超えるまでに至りました。

建物の特徴

「北前船主の館・右近家」は、主屋と西洋館から成り立っています。主屋はその伝統的な日本の建築スタイルを保ちながら、訪れる人々に親しみやすい雰囲気を醸し出しています。一方、西洋館は明治時代の影響を受けた建物で、当時の文化的交流を感じることができます。この二つの建物は、訪問者に歴史的な深みを与え、右近家の商業活動を感じさせる場となっています。

歴代当主の成績

10代目の右近権左衛門（1853年 - 1916年）は、明治時代の実業家としても知られています。彼は1896年に日本海上保険を設立し、経済的にも成功を収めました。また、11代目（1889年 - 1966年）は慶應義塾大学を卒業し、保険業界での地位を築きました。この家族の影響力は、地域の経済発展にも寄与しています。

利用情報

「北前船主の館・右近家」は、午前9時から午後4時まで開館しており、毎週水曜日は休館日となっています。観覧料は大人500円、小中学校の学生は300円であり、団体の場合は割引があります。また、アクセスはハピラインふくい線の武生駅からバスを利用するか、北陸自動車道敦賀ICから車での移動が可能です。

この資料館は、北前船や右近家の歴史に触れる良い機会です。地域の歴史を学び、その文化を理解しながら、当時の商業の盛況を感じることができる場となっています。

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