北帰行殺人事件

西村京太郎『北帰行殺人事件』

『北帰行殺人事件』は、西村京太郎が1981年に発表した長編推理小説であり、十津川警部シリーズにおける重要な作品の一つです。この作品では、シリーズを通して十津川の部下として活躍する橋本豊刑事が初めて登場し、彼の過去に深く関わる事件が描かれます。

あらすじ

物語は、橋本刑事が突然辞職を申し出る場面から始まります。十津川警部は、橋本を見送るために亀井刑事と共に羽田空港へ向かいますが、橋本は現れません。その直後、西本刑事から橋本が上野駅から青森行きの夜行列車「ゆうづる13号」に乗ろうとしていたという情報が入ります。

十津川警部が疑問に思っていると、「ゆうづる13号」の車内で全裸の男性の死体が発見されたというニュースが飛び込んできます。被害者は金子貢太郎という人物で、車内のトイレで後ろ手に縛られ、胸をナイフで刺されていました。さらに、遺体の唇には口紅が塗られているという奇妙な状況でした。

青森県警からの要請で、十津川警部は金子の身辺調査を開始します。金子は自称実業家で、素行に不審な点が多く、自宅からは口紅で「死ね」と書かれた脅迫状が見つかります。

一方、青函連絡船では、雑誌記者の青木亜木子が西本功と名乗る人物と知り合います。その直後、船内で金子と同様の手口で殺害された佐々木学の遺体が発見されます。亜木子は「ゆうづる」での事件を思い出し、西本と名乗る人物に疑念を抱きます。

佐々木の身辺を調査した結果、彼は婚約者と破局しており、その原因は佐々木の女性問題にあったことが判明します。十津川警部は過去の自殺事件を洗い直し、古川みどりという女性が橋本の恋人であったことを突き止めます。彼女は過去に集団レイプ被害に遭い、その後自殺していたのです。

札幌で亜木子は西本と再会し、同時に和田工業の社長、和田久志と知り合います。十津川と亀井は橋本を追って札幌に到着し、亜木子から西本＝橋本であるという情報を得ます。東京では、西本刑事と桜井刑事が金子、佐々木、そして他の3人がみどりを集団暴行した事実を突き止めます。

一連の事件は、復讐に燃える橋本による犯行なのか？

登場人物

警視庁捜査一課
十津川省三
亀井定雄
西本明
桜井刑事
小川刑事
加島刑事
各都道府県警
江島警部（青森県警）
阿倍警部（北海道警）
江上道警本部長（北海道警）
事件関係者
橋本豊：元東京警視庁捜査一課勤務の刑事。古川みどりの恋人。
青木亜木子：雑誌「旅窓」の記者。
和田久志：和田工業の社長。
古川みどり：20歳の大学生。君島ら5人組に集団レイプされて自殺。
暴行犯5人組
君島則史：無職。リーダー格。
金子貢太郎：虚業家。最初の犠牲者。
佐々木学：東西物産勤務。2人目の犠牲者。
柴田邦彦：大学生。3人目の犠牲者。
市川三郎：無職。4人目の犠牲者。
その他
木村友彦（キー坊）：チンピラ崩れ。
「健ちゃん」：スナック「ベラミ」のバーテンダー。
雀荘「四暗刻」の常連：本名不明。
鈴木弓子：トルコ風呂の従業員。市川の愛人。

テレビドラマ化

本作は、これまで2度テレビドラマ化されています。

1982年：『西村京太郎トラベルミステリー3・北帰行殺人事件』（テレビ朝日）
十津川警部：三橋達也
橋本豊：沖雅也
青木亜木子：樋口可南子
2004年：『西村京太郎トラベルミステリー42・北帰行殺人事件 口紅を塗られた男の死体が三つ! 超豪華寝台カシオペアと特急オホーツクが結ぶ殺人トリック』（テレビ朝日）
十津川警部：高橋英樹
橋本豊：賀集利樹

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