2003年10月、
サミーより発売された
パチスロ機『
北斗の拳』は、瞬く間に
パチスロ界を席巻し、空前の大ヒットを記録しました。同名アニメとのタイアップという要素に加え、従来の
パチスロにはない革新的なゲーム性が、多くのファンを魅了しました。累計販売台数は約62万台を記録し、これは
パチスロ史上最大のセールス数として、今もなお燦然と輝いています。
スペックとゲーム性の革新
本機はCタイプと呼ばれる機種で、バトルボーナス(BB)とJACゲーム(レギュラーボーナス)の連続によって出玉を獲得するシステムを採用しています。通常時はJACゲームが高確率で抽選・ストックされ、特定の契機役を引くことでBB低確率状態から高確率状態へと移行します。そして、「7」もしくは「
北斗の拳」図柄を揃えることでBBが開始されます。純ハズレやRT解除スイカ当選時には、BBを経由せずにJACゲームへ突入し、継続抽選に当選すると、BB絵柄を揃えることなく継続率79%のBBに突入するという、ユニークなゲームフローが特徴です。
開発秘話と苦難の道のり
実は、本機は当初、連チャン性能に優れたAT機として開発が進められていました。しかし、AT機の射幸性が問題視され、規制強化の動きが強まったため、スペック変更を余儀なくされました。その結果、自主規制を守りつつ、従来の
パチスロにはない新たなゲーム性を追求した本機が誕生したのです。発売前は、同時期にリリースされた機種の不振や、CGを多用した演出への懸念から、期待されていたとは言えませんでした。しかし、その斬新なゲーム性が徐々に評価を高め、
パチスロ雑誌で特集が組まれると、人気に火が付きました。
社会現象を巻き起こした爆発的な人気
全盛期には、多くのホールで常に満席状態が続き、空き台を待つ人々で溢れかえりました。特に、20連を超える爆発的な連チャンを見せる台には、多くの立ち見客が集まるという異様な光景も繰り広げられました。新規導入や増台の要望が後を絶たず、
サミーには数ヶ月待ちの発注が殺到しました。北斗増台のために店舗を改装したり、設置機種の半分以上が北斗というホールも現れました。さらには、「
パチスロ専門店」や「
北斗の拳専門店」まで登場するなど、社会現象と呼ぶに相応しいほどの盛り上がりを見せました。
シリーズ展開と後継機
2006年7月には、本機の後継機である『
北斗の拳SE(スペシャルエディション)』が発売され、翌2007年7月には5号機『
北斗の拳2 乱世覇王伝 天覇の章』が登場しました。本機は
2006年10月頃に検定切れを迎え、ホールから姿を消しましたが、その後も
ゲームセンターなどで遊戯することができました。
2010年5月には『
パチスロ蒼天の拳』が、2011年12月には『
パチスロ北斗の拳 世紀末救世主伝説』が登場し、それぞれ「本機種を完全継承した機種」「初代・転生」と銘打ってPRされました。そして2023年4月には、待望の完全復活リメイク機『Lスマスロ
北斗の拳』がリリースされ、再び多くのファンを魅了しています。
バトルボーナスが生み出す熱狂
本機の最大の魅力は、何と言ってもバトルボーナス(BB)です。10ゲームの小役ゲームとJACゲームのセットが継続するか否かは、1セットごとに抽選され、継続回数に上限はありません(内部ストックの関係上、実際は約250回程度が限度)。4段階ある継続率は設定に左右されないため、「引きが良ければ一発大勝」という期待感が、プレイヤーを熱狂させました。中段チェリー当選時は、高確率状態であればBB放出が確定するため、常にチェリーやスイカを引くことを期待してプレイし、当選後も興奮冷めやらぬ状態で席を立つことができませんでした。
液晶演出とラオウ昇天
液晶演出も多彩で、原作漫画やアニメ版『
北斗の拳』の世界観を忠実に再現。JACゲーム中には、
ケンシロウと
ラオウの激しいバトルが繰り広げられ、その結果がBBの継続に繋がるため、プレイヤーは一喜一憂しました。特に、BBが20回以上継続すると発生するプレミアム演出「
ラオウ昇天」は、多くのファンが一度は目にしたいと願う演出でした。しかし、ストック切れでBBが終了した場合は、昇天演出が発生しないこともありました。
『
北斗の拳』の大ヒットは、
パチスロ業界に新たな潮流を生み出すとともに、リアルタイムで原作を知らない世代にも『
北斗の拳』の魅力を伝え、「第3次北斗ブーム」を巻き起こしました。アニメDVDや原作単行本、関連グッズなどが多数販売され、社会現象と評されるほどでした。本機は、
サミーを経営危機から救い、人気メーカーとしての地位を確立するきっかけともなりました。また、勝てば継続できるバトルタイプのゲーム性は、数多くの後継機に影響を与えました。
パチスロ『
北斗の拳』は、その革新的なゲーム性、魅力的な演出、そして社会現象を巻き起こした爆発的な人気によって、
パチスロ史に燦然と輝く金字塔として、永遠に語り継がれることでしょう。