北村湖春

北村湖春（きたむら こしゅん）は、慶安3年（1650年）に生まれ、元禄10年（1697年）に没した江戸時代の歌人・俳人です。父は歌学者として名高い北村季吟で、湖春もまた俳諧の世界で独自の足跡を残しました。本名は季順といい、その才能は父にも勝るとも評されました。

生涯

北村家は元々、近江国野洲郡祇王村（現在の滋賀県野洲市）を本拠地とする医者の家系でした。父である季吟は、医業の傍ら俳諧に傾倒し、寛永19年（1642年）には京都の松永貞徳に師事して俳諧を学びました。湖春は、その季吟が貞徳の門下にあった慶安3年（1650年）に京都で生まれました。三男六女の嫡男として生まれ、幼名は久太郎（または休太郎）と称しました。父である季吟から俳諧や詩を学び、万治2年（1659年）には父が主催する古今伝授饗宴の俳諧に出席するなど、早くからその才能を発揮しました。20歳の時には、父の命により句集『続山井』を編集し、以降は季吟俳壇の実務を取り仕切り、著作の刊行を補佐しました。

寛文12年（1672年）には、幕府に召し出されて父と共に江戸へ下りました。その後、父と共に祇王村に戻りますが、天和年間（1681年 - 1684年）に父が京新玉津島社の神官となると、湖春は近江に留まり俳諧堂を主宰しました。元禄2年（1689年）には、父と共に再び幕府に召し出され江戸に移住、幕府歌学方に奉仕し歌果院と号しました。湖春は父とは別に俸禄200俵を幕府から役料として賜り、以降、北村家が代々幕府歌学方を差配することになります。しかし、湖春は元禄10年1月15日（1697年2月6日）に父に先立って亡くなり、上野下谷の感応寺に葬られました。蕉門内では、俳諧の才能は父である季吟よりも優れていると評されました。

業績

湖春は、俳人としての活動の傍ら、著作も残しています。

源語忍草: 源氏物語の注釈書として知られています。
句集『続山井』: 湖春自身が選んだ句集です。

彼の句には、自然や生活への細やかな観察眼と、それを表現する豊かな語彙が見られます。

代表句

あめつちの　はなしとだゆる　時雨哉
こねりをも　へらして植し　柳かな
枝長く　伐らぬ習を　椿かな
牡丹すく　人もや花見　とはさくら
棹の歌　はやうら涼し　めじか舟
名月や　見つめても居ぬ　夜一よさ
てしがなと　朝貌ははす　柳哉
行年よ　京へとならば　状ひとつ
我駒の　沓あらためん　橋の霜
はづかしや　蓮に見られて　ゐぬ心

家族

父：北村季吟
弟：北村正立
弟：菊次郎（早逝）
妹（乙部氏に嫁ぐ）
妹（岸本氏に嫁ぐ）
妹（池上氏に嫁ぐ）
長女
長男：北村湖元
次女（幸田氏に嫁ぐ）
次男：勘三郎（早逝）

北村湖春は、父季吟の才能を受け継ぎ、俳諧の世界で独自の境地を切り開いた人物でした。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛されています。

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