北村甫

北村甫: チベット学の先駆者

北村甫（きたむら はじめ）は、1923年に静岡で生まれ、2003年に亡くなった日本のチベット学者です。彼は戦後のチベット研究を牽引し、学問の枠を超えた総合的な研究の重要性を提唱しました。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の教授として、また理事長としての職務を通じて日本におけるチベット研究の中心人物として活躍しました。

略歴と学問的背景

北村は、静岡県立静岡中学校を卒業後、1942年に東京帝国大学文学部へ入学しました。しかし、時局の悪化に伴い1943年に学徒動員で戦地に向かい、1945年に復員しました。復学後の1948年には大学院にも進学しましたが、すぐに中退し、連合軍総司令部で専門技術官としての職務に就きました。その後、二松學舍や国立国語研究所での教職を経て、1955年には東京大学の助手になりました。

研究活動の中で、彼は人々とのコミュニケーションを重視し、インフォーマントを単なる情報提供者としてではなく、文化の一部として接しました。その姿勢は、後の研究において多大な影響を与えました。

チベット学の発展への貢献

北村の業績は、言語学の専門性だけでなく、さまざまな学問を融合させた点にあります。彼の著書『世界言語概説』や『現代チベット語分類辞典』は、チベット語の文化や音韻に関する重要なテキストとして評価されています。特に1948年の卒業論文では、満州語を基にチベット語の音韻体系を再構成しようとする試みが行われました。

1959年に発生したチベット動乱を機に、北村は国際的なチベット研究の必要性を感じ、東洋文庫を拠点にチベット人との共同研究を進めました。この取り組みにより、日本においてもチベット学の国際的な研究基地が形成され、言語研修や講習会も活発に行われました。

教育活動と人間性

北村は学生に対する教育にも熱心で、多くの学徒がチベット語を学ぶ機会を得ました。彼の教育資源としての充実した資料は、国内外でのチベット研究の基盤を支えました。

彼はまた、フランス文学への関心も持ち、晩年には多岐にわたる研究成果を残しています。その研究は、今日のチベット学の発展に多大な貢献を果たしています。彼が築き上げた研究基盤は、現代の研究者に引き継がれ、多様な研究が続いています。

北村甫の學問への情熱や姿勢は、今も多くの人々に影響を与え続けています。彼の業績はチベット学の礎となり、多様な文化理解の促進に寄与しています。

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