北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所

北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所

北海道大学に設置されたこの研究所は、世界的な人獣共通感染症のリスクを低減させるための重要な役割を担っています。2005年に設立された当初は「人獣共通感染症リサーチセンター」としてスタートし、2021年に現在の名称に改称されました。

背景と設立の目的

2000年代に入ると、SARSやBSEなどの感染症が多発し、これらは主に野生動物から人間や家畜に感染することが問題となりました。このような感染症の発生は、感染経路や病原体の特定が困難であり、対応する専門家が不足していることに起因しています。日本の行政では、ヒトに関わる医療は厚生労働省、家畜に関わる防疫は農林水産省がそれぞれ管轄しているため、共通感染症に関する統一的な対策が不十分となっていました。

このような状況を受け、北海道大学は人獣共通感染症に対する専門的かつ包括的な研究が必要だとし、喜田宏獣医学部長のもと、研究所の設立に踏み切りました。以降、同研究所は文部科学省からも共同研究拠点として認可され、国際的な研究活動を推進しています。

研究の焦点

北海道大学の研究所では、特に以下のような研究テーマに力を入れています。
1. 感染症病原体のメカニズム解明: 自然界における病原体の存続メカニズムや感染が起こる状況を把握し、新たな感染症の発生を予測するための研究を行っています。
2. 疫学調査の実施: 世界規模での疫学調査を通じて、様々な感染症の発生状況を把握し、予防対策を講じます。
3. データベースの構築: 収集した研究情報をデータベース化し、他の研究者と共有することで、より効果的な診断やワクチンの開発に役立てます。
4. 国際的な協力: WHOや他の国際機関と連携し、グローバルな感染症対策に貢献しています。

教育と人材育成

この研究所では、国内外の学生や研究者に人獣共通感染症に関する教育や研修を提供し、次世代の専門家を育てることも重要な使命としています。2017年には「大学院国際感染症学院」が開設され、特に人獣共通感染症対策に注力した教育プログラムが展開されています。

組織と部門

2020年時点での組織は多様な研究部門から成り立っており、具体的には以下のような部門があります：

• - 国際疫学部門
• - 分子病態・診断部門
• - バイオリソース部門
• - 国際協力・教育部門
• - バイオインフォマティクス部門
• - 感染・免疫部門
• - シオノギ抗ウイルス薬研究部門
• - 危機分析・対応室
• - 生物製剤研究開発室
• - 国際連携推進室
• - ザンビア拠点

このように、北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所は、多角的で実践的な研究を通じて、世界の公衆衛生に寄与することを目指しています。

もう一度検索