北海道神宮放火事件

北海道神宮放火事件：未解決の炎

1974年11月10日、北海道札幌市に鎮座する北海道神宮で発生した放火事件は、多くの謎を残したまま未解決となった事件です。この事件は、神聖な場所を焼き尽くしただけでなく、その後の社会情勢やアイヌ民族運動にも影響を与えました。

事件の発生

1974年11月10日午後9時40分頃、北海道神宮の本殿から火の手が上がりました。火災は瞬く間に広がり、本殿、祝詞殿、内拝殿など主要な建造物を全焼させました。幸いにも、ご神体は無事に持ち出されましたが、由緒ある建築物は失われました。

この本殿は、伊勢神宮の明治22年（1889年）の式年遷宮で造営された外宮正殿を移築したものであり、その歴史的価値も失われたことは大きな痛手でした。警察と消防による現場検証の結果、境内の金網が切断されていたり、外拝殿によじ登ったような跡が見つかったため、放火の疑いが濃厚となりました。当時、周囲には火の気はなく、人為的な犯行であることは明らかでした。

犯行声明と謎の組織

事件発生から2日後の11月12日、北海道新聞社に「アイヌモシリ」と名乗る者（または組織）から犯行声明文が届きました。声明文では、北海道神宮を「カムイ（アイヌの神々）を冒涜するもの」として糾弾し、白老町長襲撃事件の犯人即時釈放を要求していました。この犯行声明文には、「WSSR（世界ソビエト社会主義共和国）」という用語が使用されており、太田竜のアイヌ革命論の影響を受けている可能性が指摘されました。しかし、「アイヌモシリ」が個人名なのか組織名なのか、その実態は不明なままでした。

捜査は困難を極め、有力な手がかりが得られないまま、1981年に公訴時効を迎え、事件は未解決となりました。この事件は、犯人の動機や背景に多くの謎を残したまま、人々の記憶の中に埋もれていくことになりました。

その後の北海道神宮

全焼した北海道神宮は、事件から4年後の1978年（昭和53年）に再建され、現在に至っています。失われた歴史的建造物の復元は、多くの関係者の努力によって実現しました。しかし、この事件は、神聖な場所が政治的な主張の舞台となり得るという事実を私たちに突きつけました。

事件が残した教訓

北海道神宮放火事件は、未解決事件であるとともに、日本の社会や歴史における重要な出来事です。この事件は、民族問題や政治的な対立が、過激な行動に繋がる可能性を示唆しています。また、この事件は、日本の新左翼運動や原住民論、反日亡国論といった思想的背景と深く結びついていると考えられています。

この事件を通じて、私たちは歴史を学び、同様の悲劇を繰り返さないようにしなければなりません。事件の真相解明は困難ですが、その背景にある社会的な問題に目を向けることが、今後の課題と言えるでしょう。

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