北田佳世

北田佳世（きただ かよ）は、1978年7月7日に和歌山県で生まれた日本の元女子柔道選手です。現役時代の階級は、最も軽量の48キロ級でした。

和歌山県立田辺高等学校を卒業後、日本体育大学に進学。大学を卒業した2001年には、柔道部の名門として知られるミキハウスに入社し、所属選手として競技生活を送りました。身長は150cmと小柄ながら、得意技である背負投を武器に活躍しました。

北田選手は、国内外の様々な大会で輝かしい成績を残しています。主な実績として、2001年と2003年の福岡国際大会での優勝、2002年のワールドカップ国別団体選手権、釜山アジア大会での優勝が挙げられます。また、2003年にはドイツ国際大会、2004年にはアジア選手権でも頂点に立ちました。特に印象深いのは、柔道強豪国フランスで開催されるフランス国際大会です。北田選手はこの大会の48kg級で、2004年に優勝、続く2005年には大会2連覇を達成するなど、国際舞台でその実力を証明しました。

多くの国際大会で優勝を重ねる一方で、北田選手の競技人生には大きな壁が立ちはだかりました。それが、同じ48キロ級で長年日本の第一線に君臨し続けた、絶対女王・谷亮子選手の存在です。当時の柔道界では、オリンピックや世界選手権の日本代表選考において、全日本選抜柔道体重別選手権大会といった選考会での成績に加え、これまでの国際大会における実績も総合的に考慮されていました。そのため、選考会で優勝したとしても、必ずしも代表に選ばれるわけではありませんでした。

北田選手は、オリンピックのアテネ大会で銀メダルを獲得したフランスの強豪、フレデリク・ジョシネ選手に対し、通算で3勝1敗と勝ち越すなど、世界トップレベルの実力を備えていました。しかし、長らく谷選手と同階級であったため、競技人生を通じてオリンピックにも世界選手権にも、一度も日本代表として出場する機会を得られませんでした。

特に、2005年の全日本選抜柔道体重別選手権大会の決勝で、北田選手は谷選手と対戦。試合はほぼ互角の展開となりましたが、ゴールデンスコア方式が始まってわずか27秒後に指導を受けて惜敗しました。積極性に欠けていたわけではなかっただけに、この時の指導ポイントについては、一部メディアから疑問視する声も上がりました。

転機が訪れたのは、2005年9月にエジプトのカイロで開催された世界選手権でした。谷選手が妊娠により欠場したため、北田選手にようやく世界選手権出場のチャンスが巡ってきたのです。これが、北田選手にとって最初で最後の世界大会出場となりました。しかし、この大会では本来の実力を発揮できず、2回戦で敗退。メダルを獲得することはできませんでした。この結果は、「2007年の世界選手権と北京オリンピックの女子柔道48キロ級の日本代表は、やはり谷亮子以外にあり得ない」という見方を強める結果となり、北田選手の無念さは察するに余りあるものでした。

このように、北田選手は十分な実力を持ちながらも、常に谷選手の存在という厚い壁に阻まれ続けました。その結果、オリンピックや世界選手権の日本代表に一度も選ばれることなく競技人生を終えたことから、「悲運の柔道家」と称されることもあります。彼女と同様に、谷選手の存在によってオリンピックや世界選手権の出場機会を逸した実力者に、長井淳子選手がいました。

カイロでの世界選手権の後、北田選手は現役引退を決断。2006年4月23日に正式に引退を発表しました。引退後は、修徳高等学校で教諭を務めました。その後、結婚・出産を経て、現在は結婚相手である一般男性が主催する町道場で柔道の指導者として活動しています。婚姻後の氏名は宮田佳世さんです。長年の柔道界への貢献が評価され、2020年度には生涯スポーツ功労者賞を受賞しています。選手としては不運な側面もありましたが、指導者として柔道の普及・発展に貢献する道を歩んでいます。

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