北院御室日次記

『北院御室日次記』（きたのいんおむろひなみき）は、平安時代末期から鎌倉時代にかけて、守覚法親王によって記された日記です。

概要

現存する日記の断簡は、すべて仁和寺に伝えられています。内容は、守覚法親王自筆による治承4年（1180年）10月から11月にかけての記録1巻と、後世の写本である寿永元年（1182年）11月から12月を収めた3巻です。

また、事項ごとの抄録として、『観音院結縁灌頂記』、『元暦御灌頂記』、『孔雀経法記』、『建久御灌頂記』、『後高野御室御加行其他』、『加行事』、『旧仏重供養事』、『止雨法事』などが伝わっており、これらを合わせると、承安3年（1173年）から建仁元年（1201年）までの期間を部分的にですが知ることができます。

日記の内容は、『明月記』や『群言鈔』などにも引用されており、当時の貴族社会や仏教界の動向を知る上で重要な史料となっています。日記は具注暦を用いており、自筆本には、消息や宿紙が部分的に継ぎ足されています。

刊本

塙保己一 編『続群書類従 三一輯 下 雑部』続群書類従完成会。

参考文献

和田英松『皇室御撰之研究 〔本編〕』国書逸文研究会、1986年。
* “北院御室日次記”. 国書データベース. 2024年10月26日閲覧。

『北院御室日次記』は、単なる日記としてだけでなく、当時の社会情勢や文化、宗教観を深く理解するための貴重な資料です。特に、守覚法親王という高貴な身分の人物が記した日記であるため、当時の宮廷や仏教界の動向を具体的に知ることができます。また、日記の記述からは、当時の人々の生活や思想、信仰についても知ることができ、歴史研究において重要な役割を果たしています。さらに、日記の形式や使用されている暦法は、当時の記録文化を考察する上でも重要です。消息や宿紙が継ぎ足されているという点も、当時の資料の利用状況や紙の流通について知る手がかりとなります。

『北院御室日次記』は、その断片的な存在にもかかわらず、歴史研究において非常に価値の高い資料です。今後も、この日記の研究が進むことで、平安末期から鎌倉時代にかけての歴史がより鮮明に解明されることが期待されます。

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