能美線の歴史と概要
能美線(のみせん)は、かつて
石川県に存在した鉄道路線で、鶴来駅と新寺井駅を結んでいました。この路線は
北陸鉄道の一部であり、
愛称は「能美電(のみでん)」です。全長16.7km、21の駅が存在し、
1980年の廃止まで多くの利用者に親しまれていました。
開業の背景
この路線の構想は、
1922年に辰口温泉や湯谷鉱泉、辰口競馬場への観光利便性向上を目指して始まりました。特に九谷焼の生産地であるこの地域にとって、輸送手段の確保は重要でした。29名の発起人によって【能美電気鉄道株式
会社】が設立され、当初は蒸気鉄道の導入が考えられていましたが、その後電気鉄道へと変更されました。
1923年に鉄道大臣からの認可を受け、工事が開始されましたが、反対活動や内部紛争により開通は遅れました。最終的には1925年に新寺井から新鶴来間が開業しましたが、経営側での混乱が続きました。
路線の発展と変遷
能美線は当初から運行形態が定まらず、地元の需要に応じた設定がなされていました。戦後は石川線との直通運転が開始され、徐々に利用者が増加しました。急行電車も設定され、特に1959年頃には約60分間隔で運行されるようになりました。
さらに、
1935年 にはバス事業も開始され、周辺地域への交通網が広がりました。しかし、時代の流れには逆らえず、
1970年には昼間の運行が休止され、
1980年9月14日にすべての運行が停止されました。
廃線後の状況
廃線後、能美線の一部の軌道跡地は「健康(ヘルス)ロード」として整備され、散歩道や通学路として利用されています。特に、この路線の歴史的な側面を考慮し、2025年には開通から100年、そして廃線から45年を迎えるにあたって、ウォーキングコースとして整備される予定です。
鉄道唱歌と地域文化
能美線には『能美電唱歌』という地域の唱歌も存在していました。この唱歌は新寺井から鶴来までの各駅名や、地域名所を歌ったもので、
1927年頃に創作されたとされています。このような地域の伝統文化は、能美線がもたらした影響の一部と言えるでしょう。
車両運行と歴史的意義
運行に使用された車両は多岐にわたり、特に能美電気鉄道時代には木造や半鋼製の車両が活躍しました。初期の車両は定員が40人から52人と小規模であったため、地域の多様なニーズに応える役割を果たしました。
総じて、能美線は地域住民にとって重要な交通手段であり、観光振興や地域の経済活動にも寄与しました。今や失われた路線ですが、その影響は地域の文化や記憶に色濃く残っています。