医制

医制とその背景

医制（いせい）は、1874年8月18日に文部省から発布された日本の医療・衛生行政に関する法令です。この法令は東京府、京都府、大阪府の三府に対して施行され、全76条で構成されています。その内容は、医業の許可制や医療関係者の資格制度の確立を含むものであり、日本における近代的な医療制度の形成に大きな役割を果たしました。

歴史的背景と医制の制定

明治時代初期、日本では大学東校や長崎医学校において西洋医学が次第に広まりつつありましたが、当時の医師の大半は漢方医であり、西洋医はごく少数でした。このような状況では医療関係者の資格制度も整っておらず、技術と技能のレベルも低かったため、国民の衛生状態は非常に悪化していました。この問題を解決するため、政府は医療と衛生に関する制度を急速に整備する必要に迫られていました。

この背景の中、1871年に派遣された岩倉使節団に参加した長與專齋は、西洋の医療制度を視察し、日本に適した制度の導入を模索しました。そして1873年に彼は文部省医務局の医務局長に就任し、医制の立案に取り組みました。彼はパリで日本人医学者たちと議論し、医制の素案を作成しました。このようにして医制は、衛生行政全般や医学教育に対する必要に応えるために意図されていました。

医制の主な内容

医制の内容は幅広く、以下のように各条から構成されています：

1. 1～11条：衛生行政に関する規定
2. 12～26条：医学校に関する規定
3. 27～36条：教員と外国教師に関する規定
4. 37～53条：医師に関する規定
5. 54～76条：薬舗と売薬に関する規定

医制は特に、西洋医学に基づく医療教育の確立、医師開業免許制度の設立、近代的な薬剤師制度の確立などを目的としていました。これにより、全国的な衛生行政の体制を強化することが狙われたのです。

医制施行後の進展

医制が施行されると、個別の内容に基づく達や布達が次々と発令されていました。特に、医療制度に関する様々な法令や規則が制定されることで、その機能は徐々に発展していきました。例えば、1874年には「種痘規則」が制定され、医制に定められた内容を具体化する動きがありました。

1875年には、衛生行政が文部省から内務省へ移管され、以降の医制は改正され、医学教育に関する規定が削除されました。この変更にともない、医師や薬剤師の開業試験が実施され、医療専門職の資格制度が強化されました。

医制のその後

医制は、時代の変化に応じて様々な法令が制定されることで進化しましたが特に廃止されることはなく、自然消滅したとされています。日々の行政の中でその趣旨が反映され続けたため、医制は日本における近代的な医療制度の礎を築くこととなりました。医制はただの法令ではなく、近代日本の医療を支えた重要な指針として成立したのです。

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