十三塚

十三塚（じゅうさんづか）

十三塚は、日本各地に存在する民間信仰を基にした土木構造物であり、通常は13基の塚から成り立っています。これらの塚は、単に埋葬地としてだけではなく、古くからの伝説や生ける人々の信仰を反映した象徴的な存在です。

概要

一般的には、十三塚は1基の親塚と12基の子塚から構成されることが多く、各塚の直径は10メートル未満が一般的です。塚の上には、板碑などの石造物が設置されることがありますが、埋葬施設や地下室を有しないのが特徴です。これらの塚は中世に建造されたとされており、全国に300か所以上の例が存在します。位置としては、村境や峠道の近くに多く見られ、地域により名称が異なることもあります。たとえば、十三坊塚や十三森など、地域の言葉に由来した様々な呼称が存在します。

主な伝承

十三塚にまつわる伝説は幾つかあり、戦死した者や落武者の供養のために造られたとされることが多いです。また、埋蔵金の隠し場所としての伝承や、12匹の猫と1匹の巨大なネズミの物語も存在しています。この物語では、ある寺で化け物が現れ、12匹の猫がそれに立ち向かう姿が描かれています。夜が明けると、猫とネズミの死体が残され、住職はその猫たちを供養するために塚を作った、というものです。これが十三塚の名の由来とされています。

起源

十三塚の築造理由については学術的な研究が進められており、いくつかの仮説があります。ある研究者は、十三仏信仰が起源である可能性を指摘しています。また、古墳時代の群集墳、経塚、無縁仏の供養のために造られたものなど、多様な要素が絡み合っていることが示唆されていますが、依然として解明が進んでいない部分も多いのが現状です。

主な遺跡

全国各地に散在する十三塚の中でも、特に重要な遺跡としては以下のような場所があります。

• - 東北地方

- 岩手県奥州市水沢 - 黒石の十三塚（重要有形民俗文化財）
- 宮城県仙台市太白区

• - 関東地方

- 東京都稲城市平尾の平尾十三塚
- 千葉県千葉市中央区の七天王塚
- 千葉県柏市藤ヶ谷の藤ヶ谷十三塚
- 神奈川県横浜市田谷町の田谷の十三塚

• - 中部地方

- 愛知県岡崎市

• - 近畿地方

- 奈良県生駒郡平群町の生駒十三峠
- 兵庫県丹波市の金屋の十三塚

• - 九州地方

- 福岡県八女郡広川町
- 鹿児島県霧島市

地名

「十三塚」を含む地名も広がっており、秋田県横手市や宮城県利府町、岐阜県、愛知県、香川県、宮崎県、鹿児島県など、多くの地域でこの名称が見られます。これは、地域に根付いた信仰や文化の表れであり、十三塚が持つ意義の一部を示しています。

参考文献

• - 柳田國男・堀一郎『十三塚考』三省堂出版、1948年
• - 武田芳満子『キリシタンと十三塚』近代文芸社、1983年
• - 神奈川大学日本常民文化研究所編『十三塚』現況調査編（平凡社、1984年）
• - 神奈川大学日本常民文化研究所編『十三塚』実測調査・考察編（平凡社、1985年）

関連項目

• - 十三仏
• - 十三峠
• - 十三塚原

これらの塚は単に地域の遺跡としてだけではなく、信仰や伝承を宿す重要な文化的資産であると考えられています。

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