群集墳

群集墳：古墳時代の密集した墓域

古墳時代後期から終末期（5世紀後半～7世紀）にかけて栄えた群集墳は、狭い範囲に密集した多数の小規模古墳からなる墓域です。円墳が中心で、まれに方墳も見られます。個々の古墳は小さく、明確な区画がなく、互いに接するように築造されていることが多いため、周濠や堤などの区画施設は乏しいのが一般的です。そのため、個々の古墳に固有の名前が付けられることは少なく、全体をまとめて「○○千塚古墳群」などと呼ばれます。例えば、個々の古墳は「1号墳」「2号墳」のように番号で区別されたり、「天王塚」「将軍塚」といった名称が付けられることもあります。

群集墳の規模と分布

群集墳は、山の斜面や丘陵地といった比較的狭い土地に造られることが多く、その規模は地域によって大きく異なります。大阪府八尾市の高安千塚古墳群は現在でも155基の古墳が確認されており、柏原市の平尾山千塚古墳群では千基を超える古墳の存在が明らかになっています。これらの古墳群は、東西500メートル、南北400メートルという広大な範囲に広がっています。この面積は、誉田山古墳（応神天皇陵）とほぼ同じ規模です。

群集墳は全国各地に分布しており、代表的なものとして、埼玉県吉見町の吉見百穴、神奈川県平塚市の万田熊之台横穴群、石川県の中能登町と七尾市にまたがる川田古墳群（能登地方最大規模）、岐阜県西濃地方の船木山古墳群（200基以上）、岐阜県揖斐川流域の願成寺古墳群と赤坂古墳群（いずれも100基以上）、京都府宇治市の木幡山古墳群（120基の小円墳、南山城地方最大規模）、大阪府茨木市の桑原遺跡群集墳、大阪府大阪市の長原古墳群、奈良県天理市の和爾群集墳、奈良県橿原市の新沢千塚古墳群、奈良県葛城市の山口千塚古墳群と寺口忍海古墳群、奈良県御所市の石光山古墳群、和歌山県和歌山市の岩橋千塚古墳群、岡山県清音村の清音村峠古墳群、そして宮崎県の西都原古墳群などがあります。

埋葬施設と副葬品

群集墳の埋葬施設は、時代や地域によって多様な様相を呈します。5世紀頃の初期群集墳では、竪穴式石室、粘土槨、木棺直葬などが見られます。副葬品も、鉄製の武器や農耕具など、前期古墳と同様のものが多く見られます。しかし、時代が下るにつれて、横穴式石室が一般的になり、副葬品の内容も変化していきます。6世紀後半になると、横穴式石室が主流となり、副葬品は農耕具中心になる傾向が見られます。これらの変化は、当時の社会構造や経済活動の変化を反映していると考えられます。

群集墳の形成と意味

群集墳の形成は、5世紀から始まり、6世紀末まで続いた地域や、7世紀に入ってから形成が始まった地域など、地域差が見られます。それぞれの群集墳が形成された背景や、そこに葬られた人々の身分、群集墳を築造した集団の性格など、様々な謎が残されています。群集墳の密集性から、同一氏族や血縁関係のある集団による墓域であった可能性が考えられています。また、それぞれの小単位（支群）の形成過程や、全体を統合する仕組みについても、今後の研究が待たれます。群集墳は、古墳時代の社会構造や葬制を理解する上で、重要な手がかりとなる遺跡です。

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