十二人の怒れる男

『十二人の怒れる男』

『十二人の怒れる男』（じゅうににんのいかれるおとこ、12 Angry Men）は、1954年に製作されたアメリカのテレビドラマで、原作者はレジナルド・ローズです。この作品は「法廷もの」として分類されるサスペンスドラマであり、特に1957年にリメイクされた映画版が広く知られています。密室劇としての特性を持ち、物語の本質が脚本の面白さにあることを証明する例としても言及されています。日本においては、アメリカの陪審制度のメリットとデメリットを知るために引用されることが多いです。

背景

本作のアイデアは、レジナルド・ローズが実際の殺人事件の陪審員としての経験から生まれました。その結果約1ヶ月後にはこの作品の構想に取りかかり執筆を始めました。

あらすじ

物語は、父親殺しの罪に問われた少年の裁判に関わる陪審員たちの議論を描いています。陪審員たちは一室に集まり、法廷で提出された証拠や証言をもとに少年の有罪を確信していました。しかし、その中でただ一人、陪審員8番だけが少年の無罪を主張し、他の陪審員たちに証拠の疑わしい点を再検証するよう促します。彼の熱意が徐々に他の陪審員たちの心に影響を与え、議論は進展していきます。

登場人物

この作品には多種多様な陪審員がおり、それぞれ固有のバックグラウンドを持っています。例えば、陪審員1番は体育教師でリーダーシップを発揮し、陪審員2番は気弱ですが慎重に無罪を支持します。一方、陪審員3番は息子との確執から有罪に固執するなど、個々の意見や態度が物語に大きく影響を与えています。特に陪審員8番は最初に無罪を訴える重要なキャラクターであり、彼の行動が物語を進める原動力となっています。

テレビドラマ版

この作品は、CBSの単発ドラマ番組『Westinghouse Studio One』の一環として1954年に放送されました。当時はVTRが開発されておらず、生放送の形式で行われました。脚本は多くのセリフがカットされたものの、演出は高い評価を受け、プライムタイム・エミー賞の3冠を獲得しました。

映画版

1957年にリメイクされた映画版は、シドニー・ルメットが監督を務め、ヘンリー・フォンダが主演しました。この映画は公開当初から高い評価を受け、2007年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録されました。

舞台化とその後の作品

本作は原作者レジナルド・ローズによって舞台用に脚色され、以降広く上演されています。様々なバージョンの舞台や映像化があり、特に女性キャストが演じる場合にはタイトルが変わることもあります。さらに、他の国でもリメイクやオマージュを受けた作品が数多く存在しています。たとえば、ロシアの映画『12』やインドの『Ek Ruka Hua Faisla』などがそれにあたります。

日本での影響

日本語訳され、広く受け入れられたこの作品は、様々な形で舞台化されています。また、他の作品にインスピレーションを与えたことで、日本文学や演劇においても重要な位置を占めています。特に、筒井康隆や三谷幸喜といった著名な作家によって、陪審制度をテーマにした戯曲が書かれています。

このように、『十二人の怒れる男』は、法廷劇の枠を超えて、観る者に深い思索を促す傑作として、世代を超えて愛され続けています。

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