十劍大神流

十劍大神流について

十劍大神流は、明治時代に山邊春正（やまべはるまさ）によって創始された総合武術の流派で、柔術、居合、剣術、薙刀、棒などを網羅しています。この流派は、男型と女型の二種類に分けられ、女性型は「十剣大神流女式」と呼ばれています。

歴史的背景

十劍大神流の遠祖は常陸坊海尊とされており、流祖である山邊春正は武蔵国出身の武士です。彼の家系は徳川家に仕えていた軍学の師の末裔であり、母は八重垣流の薙刀を学んだ家系でした。春正は若い頃から修業に励み、早くも秩父の山中で奥妙に達し「十劍山神流」を創始しましたが、後に流派名を「十剣大神流」と改めました。

春正は自身の技術を広めるために諸国を回り、その後、東京都の大井町に道場を構えました。彼はその道場で武術の研究や指導に専念し、 男性と女性両方の弟子を育てました。特に女性のための武術を重要視し、陸軍士官学校での指導を通じて女型の柔道も発明しました。その成果を受け、十剣大神流女式が成立します。

教えの広まり

十剣大神流は、後にフランスの軍艦との交流を通じて国際的な評価を受けることになります。春正の門弟であるフランソワーは、フランスから招聘された技師であり、明治22年に春正の弟子となりました。フランソワーは、フランスの軍人たちに春正の武術を広め、フランス公使や大使が門下生となるなど、流派の名声を高めました。1906年には横浜でフランス艦隊との対抗試合が行われ、春正は艦員たちの前で圧倒的な技量を示します。

また、イギリスのコンノート公が来日した際には、彼を前に武術の演武を行う機会を得て、これによって流派の認知度がさらに向上しました。演武では、様々な技術が披露され、その高い技術は多くの外国人に驚かれました。

様々な技と教え

十剣大神流は数多くの技術体系を持っており、居合術や薙刀、棒術の技が記録されています。居合術には多様な立抜や座抜があり、剣術においては真剣同士の戦いを想定した仕合型も存在します。柔術では初段から中段、及び座術に至るまで多岐にわたる技術が整備されており、これらは防衛術としての実用性も重視されています。

渡邊春正の影響

春正は1923年に亡くなりましたが、その後の伝承の記録はあまり残っていません。後に綿谷雪が編纂した『武芸流派大事典』には彼の弟子たちや流派の系譜が記載されており、伊藤芳太郎や伊藤博一といった名前が見受けられます。

結論

十剣大神流は、山邊春正の努力によって生まれた日本の伝統的な武道であり、彼の生涯を通じて培われた技術や教えは、今もなお多くの武術愛好者によって受け継がれています。特に女性に対する武道の普及に貢献した点でも特筆すべき流派です。この流派は、武道の枠を超えて、精神的な成長や身体能力向上を目指す道として、現代においても重要な存在であり続けているのです。

もう一度検索