常陸坊海尊

常陸坊海尊（ひたちぼう かいそん）とは

常陸坊海尊は、『源平盛衰記』、『義経記』、『平家物語』などの古典に登場する人物ですが、生没年は不明です。園城寺（三井寺）または比叡山の僧であったとされています。源義経の家来となり、その生涯において重要な役割を果たしたと伝えられています。

源義経との関わり

海尊は、武蔵坊弁慶らと共に源義経一行に同行し、都落ちの旅を共にしました。義経が最期を迎えることになる奥州平泉での藤原泰衡との戦い（衣川の戦い）では、義経の家来数名と共に山寺を拝んでいたため、奇跡的に生き延びることができたと伝えられています。この出来事が、後の海尊に関する様々な伝説を生むきっかけとなりました。

源義経の遺児伝承

海尊は、義経の遺児に関わる伝承にも登場します。栃木県真岡市の遍照寺の古寺誌によると、海尊は藤原秀衡の命を受け、義経の子である経若（つねわか）を常陸入道念西（伊達朝宗）に託したとされています。また、青森県弘前市の圓明寺（円明寺）の縁起にも、同様の伝承が記されており、千歳丸（後の経若丸）が義経の子であり、海尊が彼を念西に預けたとされています。

これらの伝承は、海尊が義経の遺児の保護に深く関わっていた可能性を示唆しており、彼の人物像をより複雑なものにしています。

不老不死の伝説

衣川の戦いを生き延びた海尊は、その後、不老不死の身になったという伝説があります。彼は400年もの間生きており、源平合戦や義経伝説について語ることができたと伝えられています。江戸時代初期には、残夢という老人が源平合戦を語っており、人々は彼を海尊だと信じていたという記録が『本朝神社考』に林羅山によって記述されています。また、岩手県洋野町には、海尊の墓であると伝えられる古い石碑が現存しています。これらの伝説は、海尊が単なる歴史上の人物ではなく、民衆の想像力によって形作られた存在であることを示しています。

関連作品

海尊を題材にした作品も存在し、秋元松代による戯曲『常陸坊海尊』が1964年に初演されました。この戯曲は、海尊の複雑な人物像を深く掘り下げた作品として知られています。

参考文献

坂東武士の系譜・第4部 激動の時代37　中村玄角（産経新聞、2019年9月22日）
鷹橋忍『海尊』（歴史街道 PHP研究所、2020年6月5日、JAN 4910196110703）

まとめ

常陸坊海尊は、歴史と伝説が入り混じった魅力的な人物です。源義経の家来として活躍した一方で、不老不死の伝説や義経の遺児を託されたという伝承は、人々の想像力を掻き立て、多くの物語を生み出してきました。彼の生涯は謎に包まれていますが、その存在は現代においても多くの人々を魅了し続けています。

もう一度検索