十四試中型飛行艇

十四試中型飛行艇について

十四試中型飛行艇（じゅうよんしちゅうがたひこうてい）は、大日本帝国海軍によって計画された飛行艇です。この機体は、略符号「H10H」と実計番号「H10」で呼ばれています。

開発の背景

九七式や二式飛行艇などの大型飛行艇の調達が予算の都合から限定される中で、それらを補完する尺度として中型飛行艇が求められていました。特に、1939年4月もしくは1940年4月に開発が始まりました。広海軍工廠の松浦陽恵が設計チームの主任として活躍し、一方で海軍航空技術廠の大築志夫が基礎計画に従事していました。設計の具体的なプロセスは1940年9月末に広廠のチームに引き継がれましたが、さまざまな問題に直面しました。

計画の進行と遅延

風洞試験中にナセル（プロペラの収容部分）のストールと呼ばれる現象への対処が課題となったほか、広廠と空技廠の間には顔を立てるための調整が必要でした。さらに、海軍の予算増額により、大型飛行艇の製造が優先され、設計の進行に影響を及ぼしました。加えて、十五試双発陸上爆撃機（後の銀河）への人員集中の必要性も出てきたため、十四試中型飛行艇の計画は中止を余儀なくされました。最終的に、設計が85パーセント完成し主桁の製造も済んだ1941年8月にその計画は終了しました。

機体の仕様

この飛行艇は、特徴的な4発の高翼を有しており、艇首および後部に銃座を配置するデザインが施されています。航続力においては大型飛行艇に劣るものの、その代わりにより高速の運航を目指しており、最大速度は481 km/hを設定されていました。また、艇体は完全に流線型のショート・ハル型で、滑走時にメインステップに乗る新しいロングステップを採用しています。開発が中止された時点では、ナセル・ストールの問題解決の目処が立っていたことも注目に値します。

諸元

計画された十四試中型飛行艇のスペックは以下の通りです。

• - 全幅: 28.0 m
• - 重量: 18,000 kg
• - エンジン: 三菱 金星五〇型空冷星型14気筒（離昇1,300 hp）×4
• - 最大速度: 472 km/h（255 kt）
• - 航続距離: 6,482 km（3,500浬）
• - 武装: 20mm機銃×2、13mm機銃×3

参考文献

この情報は、岡村純と巌谷英一の著作『日本の航空機 ―海軍機篇―』（1960年）や、日本航空学術史編集委員会の編纂した『日本航空学術史（1910－1945）』（1990年）を基にしています。

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