十楽寺直彦

十楽寺 直彦

十楽寺 直彦（じゅうらくじ なおひこ）は、1926年3月12日に東京都で生まれた日本の都市計画家であり、造園家としても知られています。

千葉高等園芸学校（現在の千葉大学園芸学部）で専門的な知識を修得した後、1946年に札幌市役所に入庁し、公務員としてのキャリアをスタートさせました。

市役所での初期には、公園指導員や、現在の「なかよし子供館」の前身にあたる巡回幼稚園の業務など、市民の生活に近い場で活動しました。その後、1961年から1968年にかけて公園課長を務め、札幌市の公園行政の中枢を担います。公園課長退任後も、企画調整局計画部長・企画部長、1973年には都市開発局開発部長、そして1975年には環境局緑化推進部長と、要職を歴任し、都市計画や開発、環境緑化といった幅広い分野でその手腕を発揮しました。定年を待たず、1981年末に市役所を退職しました。

十楽寺氏の業績の中でも特筆すべきは、戦後間もない時期の札幌市の公園緑地復興と整備への貢献です。

終戦直後、進駐軍の車両の通路として利用されるなど荒廃が著しかった中島公園の再生に尽力しました。荒れ果てた公園を、再び市民が憩える空間として蘇らせるための取り組みは、札幌の緑地行政の重要な一歩となりました。

公園係長を務めていた1958年には、中島公園で開催された北海道大博覧会を記念する事業として、「雪の広場」の開発に携わりました。この広場は、物理学者の中谷宇吉郎氏と共同で設計され、雪の結晶をモチーフにしたユニークなデザインが特徴でした。

また、豊平川の活用についても先進的な構想を提唱しました。都市計画区域内に豊平川を指定し、将来的に堤防に囲まれた河川敷空間を公園として利用するというアイデアは、当時の常識を超えるものでした。この提案は実を結び、1967年には藻岩橋から雁来大橋までの約330ヘクタールにおよぶ広大なエリアが、水面部分を含めて「豊平川緑地」として都市計画上の公園緑地に位置づけられることとなりました。これは、河川空間を都市の緑地として積極的に活用する先駆的な事例と言えます。

環境局緑化推進部長時代には、自然保護に関連する施策や、札幌の象徴でもあるカムバックサーモン運動の推進にも深く関わりました。

公務に励む傍ら、アメリカやスウェーデンといった欧米諸国を精力的に訪問し、現地の多くの公園を視察しました。そこで得た先進的な知識や優れた技術を積極的に吸収し、札幌の都市計画や公園整備に応用することで、その質の向上に貢献しました。

これらの長年にわたる功績が認められ、1986年には日本公園緑地協会創立50周年記念の表彰を受けています。

十楽寺直彦氏は、札幌市の戦後復興から高度成長期にかけて、都市の骨格を形成する上で重要な役割を果たし、特に公園緑地の整備を通じて、市民生活の質の向上と緑豊かな都市景観の創出に多大な貢献をしました。その業績は、現在の札幌市の公園や緑地の礎となっています。

もう一度検索