千のナイフ

坂本龍一のデビューアルバム『千のナイフ』

『千のナイフ』（せんのナイフ、Thousand Knives）は、日本の音楽家坂本龍一による初のオリジナルアルバムで、1978年10月25日に日本コロムビアからリリースされました。このアルバムは、ベルギーの詩人アンドレ・ミショーの著書『みじめな奇蹟』の冒頭の一節に由来するタイトルが付けられています。

制作背景

アルバムの制作は、日本コロムビアの第4スタジオで行われ、合計339時間をかけてレコーディングされました。坂本は日中はスタジオ・ミュージシャンとして活動し、夜にはアルバム制作に取り組み、何ヶ月にもわたる過酷な作業を経て完成させました。彼は「寝なくても大丈夫だった」と回想しており、その情熱が表れています。また、このアルバムでは松武秀樹がコンピュータ・オペレーターを務め、ギタリストの渡辺香津美やカスタネット奏者の山下達郎がゲスト参加しています。初回プレスはわずか500枚で、そのうちの200枚は返品されました。

プロモーションとアートワーク

アルバムのリリースを記念して、1978年10月25日と26日に東京・六本木のピットインでライヴコンサートが開催されました。レコードの帯にはキャッチコピーが記載され、坂本のスタイリッシュな作品としての位置づけが強調されました。

ジャケットのスタイリングは、坂本と共にYMOのメンバーともなる高橋幸宏が手がけました。彼は、長髪にヒゲ、Tシャツ姿の坂本に対し、ジョルジオ・アルマーニのジャケットとリーバイス501ジーンズで新たなイメージを作り上げました。

ライナーノーツには坂本のほか、林光や細野晴臣が寄稿しました。特に細野は、自身の「イエローマジック」のコンセプトに絡めた文も記しています。

収録曲とスタイル

Side A

• - 千のナイフ (THOUSAND KNIVES)  – (9分34秒)

このトラックは、坂本のヴォコーダーによる毛沢東の詩の朗読から始まり、印象的な和音のサウンドが広がります。メロディーには大正琴が模倣され、レゲエや賛美歌の要素が取り込まれています。

• - ISLAND OF WOODS  – (9分50秒)

ブラジルのバードホイッスルや森の音が全体を包み込み、中間部では心臓の鼓動や犬の鳴き声を表現しています。

• - GRASSHOPPERS  – (5分16秒)

高橋悠治とのピアノデュオによるこの曲は、6拍子のメロディー部と3拍子の即興演奏が特徴です。

Side B

• - 新日本電子的民謡 (DAS NEUE JAPANISCHE ELEKTRONISCHE VOLKSLIED)  – (8分05秒)

坂本流の民謡を目指した楽曲ですが、発表後には自身が「完全な西洋音楽」と述べることになります。

• - PLASTIC BAMBOO  – (6分31秒)

シンセによる独特なメロディーを基に、緩やかなリズム感を持っています。

• - THE END OF ASIA  – (6分21秒)

この曲は「アジアの果て」をテーマにしており、中国国歌にちなむ部分も含まれています。

まとめ

『千のナイフ』は、坂本龍一の音楽スタイルを決定づけ、のちの音楽キャリアの基盤となりました。YMOとしてもライブで演奏されることがあり、この作品は坂本の革新性を象徴する重要な作品と言えます。

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