千曲川 (五木ひろしの曲)

千曲川

「千曲川」は、1975年5月25日にリリースされた五木ひろしのシングルであり、講堂が舞台の長野県をテーマにしたご当地ソングの一つです。この楽曲は、五木の代表作として親しまれているだけでなく、日本の音楽史にもその名を刻む歌でもあります。

背景と制作

この曲の原点は、初めて五木が音楽家として対峙した時期に遡ります。もともと「千曲川」は、猪俣公章が春日なる美しさを表現した楽曲として準備されていましたが、新人歌手の川中美幸にはその魅力が伝わらず、いわば不振に悩むプロジェクトとして立ち消え状態でした。そんな折、作詞家の山口洋子がこの作品に目をつけ、猪俣から楽曲を譲り受けることになりました。

山口は、明治の文豪・島崎藤村による「千曲川旅情の歌」に深い感銘を受け、その情景を思い描きながら詩を練りました。彼女は東方の情景を憧憬とも呼ぶ愛情を込め、現地に赴くことなく作品を創作しました。また、この過程で演歌の典型的なテーマである恋愛や情の表現は排除され、純粋に風景を描写するスタイルを取り入れました。

ヒットの要因

この工夫が奏功し、「千曲川」はヒットを記録します。音楽ランキングでは最高位6位、登場週数42週という驚異的な成績を残し、45万枚以上の売上を達成しました。この楽曲は五木のフィールドとしての名作の一つであり、1975年には第4回東京音楽祭のゴールデン・カナリー賞を2年連続で受賞し、世界大会へも出場を果たしました。

更に、五木はこの曲を引っ提げて「第26回NHK紅白歌合戦」で白組トリに初めて選ばれます。この瞬間は彼にとって名実ともに多くの道を開く契機となったのです。22年後、1997年に迎えた長野オリンピックに合わせて再び紅白に選曲された際、五木は再度この曲を歌唱し、注目を集めました。

受賞歴とその影響

「千曲川」はその後も数々の賞を受賞し、五木のキャリアに光を与える重要な楽曲となりました。同曲により五木は日本の音楽シーンにおける地位を確立し、彼自身も話すように「とても難しい曲で音域が広い」と対することで、アーティストとしての挑戦も重ねることとなりました。

さらに、山口洋子は自身の晩年にこの作品への愛情を再確認し、「今でも”千曲川”が一番好きです」と述懐しているというエピソードもあります。楽曲が持つ深い歴史が彼女の思いの強さを如実に物語っています。長野県にはこの曲を称える歌碑も設置されており、地域に根付く文化の一部として、今も多くの人々に触れられています。

収録情報

「千曲川」には他の楽曲も収録されており、同シングルには猪俣公章の作曲による「愛のいのち」が収められています。それぞれに作詞は山口洋子、音楽の編曲を担当したのは森岡賢一郎と竜崎孝路が行っています。このシングルは、発売当初から現在に至るまで多くのファンに支持されています。

このように「千曲川」は、五木ひろしが日本中にその名を知らしめた一曲であり、長野県の魅力を音楽で表現した作品といえるでしょう。また聴く人々の心に響き、今日もなお多くの人々に愛され続けています。

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