猪俣公章

猪俣公章の音楽人生

猪俣 公章（いのまた こうしょう、1938年4月11日 - 1993年6月10日）は、福島県河沼郡会津坂下町で生まれた日本の著名な作曲家・作詞家です。彼の本名も同じく「いのまた きみあき」と表記されますが、音楽界ではその才能を引き立てる愛称とともに広く知られています。

生い立ちから作曲家へ

猪俣は、旧制京都帝国大学の工学部電気工学科を卒業した後、東北電力に勤務していた父と、福島市で料亭を経営する母のもとに育ちました。彼の家族は猪俣総本家という家系であり、こうした環境が彼の音楽の感性に影響を与えたと考えられています。

彼は小学5年生のときから作曲を始め、中学時代には作曲家としての道を志すこととなります。中学卒業後は上京し、開成高等学校に入学しましたが、実家の経済状況が厳しくなったため、大学進学のために1年間の浪人生活を選択しました。この間、彼は喫茶店のボーイやバーテンダー、さらにはペンキ職人として働き、入学金を稼ぎ出しました。

1958年、猪俣は日本大学芸術学部音楽科に入学し、大学生活を送りながら新橋や銀座のキャバレーでバンド演奏を行い、ベースを担当しました。1960年には著名な作曲家古賀政男によって設立されたプロダクションにスタッフとして加入し、事実上の門下生として彼からの指導を受けました。その後、1962年にビクターレコードと契約し、作曲家としての道を本格的に歩み始めます。

多彩なヒット作

彼の作曲家デビューは1964年に鈴木やすしの「僕の手でよかったら」であり、その後の1966年には森進一のヒット曲「女のためいき」を作曲しました。この曲は森進一のデビュー作であり、彼の音楽キャリアを大きく引き上げることとなります。猪俣は以降も「ひとり酒場で」「港町ブルース」「おふくろさん」など、多くの名曲を手掛け、次々とヒットを生み出しました。

彼は歌手だけでなく、内弟子として育てた坂本冬美の「アバレ太鼓」や、マルシアの「ふりむけばヨコハマ」といった代表曲でも知られています。また、藤圭子の「女のブルース」や「京都から博多まで」、五木ひろしの「千曲川」、テレサ・テンの「空港」といった曲も彼の作品です。数多くの名曲を世に送り出し、数々のアーティストに楽曲を提供したことで、猪俣は日本の音楽界で確固たる地位を築きました。

音楽教育への貢献

猪俣公章は単なる作曲家にとどまらず、現代の音楽シーンにおいても弟子たちを育成し続けました。特に坂本冬美やマルシアなどの若手アーティストに対して深い影響を与え、彼らの成長を見守ったことは、音楽界における彼の重要な役割を示しています。また、里村龍一や冬樹かずみといった他の音楽作家の育成にも尽力し、彼の影響は多岐にわたりました。

人生の終わりと影響

1991年、猪俣は19歳年下の女性と結婚し、一子にも恵まれました。しかし、1993年、肺がんにより55歳で急逝しました。彼の音楽は今もなお多くの人々に愛され続けており、その名曲たちは日本の音楽シーンにおける不朽の名作として、後世に引き継がれています。猪俣公章の功績は、単なるヒット曲作りだけでなく、日本の音楽文化を豊かにすることにも寄与したと言えるでしょう。

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