半衿

半襟とは

半襟（はんえり）は、和服の下着である襦袢に縫い付けられる替え衿で、その名称は襟の長さが実際の半分程度であることに由来しています。主な機能としては、襦袢を汚れや埃から守るために使用されるもので、汚れた際には取り外して洗濯し、何度も使い回すことができるのが特徴です。

この半襟は、顔に近い部分に位置するため、見た目を大きく左右するアイテムでもあり、重要な着こなしのポイントとされています。そのため、高級感のある刺繍や装飾が施された数十万円の半襟も存在し、ファッションの一部としても活用されています。

半襟の着用法

半襟は下着の一部と見なされますが、その一部が見えることが正式な着用法であり、これは世界の民族衣装の中でも珍しい例と言えるでしょう。例えば、洋服のウェストコートに付けられる白い衿や、ワイシャツのセパレートカラーや襞襟などにも類似点があります。

素材と種類

半襟に使用される素材には、多様な選択肢があります。一般的には、塩瀬羽二重がカジュアルからフォーマルまでの幅広いシーンで用いられ、主流となっています。一方、縮緬は、その多様性からフォーマルにもカジュアルにも適しています。塩瀬と縮緬の違いは明確ではありませんが、塩瀬の光沢感が高級感を演出し、フォーマルシーンに選ばれることが多い理由の一つです。

普段着としては、丈夫で汚れに強い木綿を使った半襟も見られています。また、最近ではポリエステル製のものも多く流通しています。

女性向け半襟の歴史

戦前の日本では、女性の半襟は主に色や刺繍が施されたものが中心でした。しかし、1940年の奢侈品等製造販売制限規則の施行を受け、白い襟が主流に変わりました。その後、戦後に色付きの襟が再び復活したものの、高度経済成長期に和服が普段着から脱却するに伴い、ほぼ白襟一色となりました。現在では、白以外にも赤、黄、青、緑、桃色、水色、紫など、数え切れないほどの色が存在します。

ただし、赤い襟は少女向けとされ、既婚女性は避けることが一般的です。無地のものの他にも、刺繍やビーズを施した装飾性の高いものも多く、模様は季節に合わせたデザインが重視されています。

男性向け半襟

男性用の半襟は、粋なデザインが求められ、最も人気があるのは黒色です。そのほかにも上品な薄青、灰色、茶色、深緑、藍など、落ち着いた色合いのものが多く見受けられます。礼装の場合、現在は白無地が一般的ですが、昭和初期までは柔らかな薄水色や薄灰色、浅黄色、紺なども用いられていました。

襟替えの文化

現在、襟替えは花柳界の言葉として知られています。これは、少女が赤い半襟をつけた状態から、成長して一人前の女性として白い半襟に掛け替える慣習を指します。この儀式を行う際、半玉や舞妓と呼ばれる雛妓が芸妓へと成長することが意味され、襟替えの際には髪形の変更も行われます。襟替え前の雛妓は一般に赤襟と呼ばれることがあります。

このように、半襟は単なる和服のアクセサリーに留まらず、日本の文化や社会において重要な役割を果たしています。その特有のデザインや素材、歴史を通じて、半襟は和服の着こなしの中で欠かせない存在となっています。

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