卒都婆小町

卒都婆小町（そとばこまち）

能楽の演目の一つで、観阿弥によって作られたとされています。「小町物」と呼ばれる、小野小町を主人公とする作品群の中でも代表的な作品です。流派によって「そとわこまち」（観世流）、「そとわごまち」（喜多流）とも呼ばれます。

あらすじ

物語は、一人の老女が卒塔婆に腰掛けている場面から始まります。そこへ通りかかった高野山の僧が、卒塔婆に腰掛けるとは何事かと老女を咎め、説教を始めます。ところが、老女は僧の説教をものともせず、逆に法論でやり込めてしまうのです。驚いた僧が老女の名を尋ねると、彼女こそ、かつて美貌と才能を謳われた小野小町の変わり果てた姿であると明かされます。

小町は、自らの過去を語り始めます。華やかな日々、そして衰えゆく姿。そんな彼女の前に、かつて小町に恋焦がれ、百夜通いをしながらも願いを果たせずに亡くなった四位の少将の霊が現れ、小町に取り憑き苦しめます。

作品のポイント

小町物: 卒都婆小町は、小野小町を主人公とする能の作品群「小町物」の一つです。小町の晩年や、美貌と才能ゆえの苦悩を描いた作品が多く存在します。
法論: 僧と小町の法論は、この作品の見どころの一つです。老いさらばえた姿になっても、なお衰えぬ小町の知性と教養が際立ちます。
* 四位少将の霊: 小町に取り憑く四位少将の霊は、小町の過去の業を象徴しています。美貌と才能ゆえに多くの男性を魅了した小町の罪深さが、亡霊という形で現れます。

近代能楽

三島由紀夫によって、近代能楽として翻案された作品も存在します。三島由紀夫は、能の形式や精神を現代に蘇らせることを試み、数々の近代能楽作品を残しました。三島版『卒塔婆小町』もその一つで、能の古典を現代的な視点から解釈し、新たな魅力を引き出しています。

卒都婆小町は、小野小町の伝説を基に、人間の業や執念、そして老いといった普遍的なテーマを描いた作品です。能の奥深さを感じることができるでしょう。

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