能

能の概説

能（のう）は、日本が誇る伝統的な舞台芸術であり、特に日本の能楽の一部として知られています。この芸術形式は、演者が能面を装着し、独自の動きや歌唱で物語を語るスタイルが特徴です。

歴史的背景

能は、江戸時代には「猿楽」と呼ばれていましたが、明治維新の時代に入るとその名称が改められ、「能楽」と総称されるようになりました。もともと「能」という言葉は、特定の舞台芸術を指すのではなく、物の真似や滑稽さを目的としない、筋のある劇を指す一般名詞でした。このため、田楽や延年なども「能」の一部とされていました。しかし、猿楽が非常に人気となったため、猿楽の一部としての「能」が広く認識されるようになりました。そして1881年には「能楽社」が設立され、それを機に猿楽から能楽への名称変更が行われたため、現在の「能」という語は能楽のなかで超自然的なテーマを扱った劇を指すようになりました。特に能は、観客に深い感情や思想を喚起する高尚なものであるとされています。

主要な曲目

現在の能の repertory（レパートリー）は、中世に成立した古典的な作品で構成されており、流派によって異なるものの、概ね二百数十の曲が現行曲として認識されています。歴史的には、これらの曲以外にも2000番から3000番程度の作品が存在していたとされ、中には再び演じられることを目的とした復曲が試みられているものもあります。さらに、近年では新たに創作された「新作能」も行われています。

さまざまな曲の分類

能の曲目は、さまざまなカテゴリに分類され、それぞれに独特なテーマが設けられています。以下に主な分類を詳述します。

脇能物（初番目物）

• - 男神物: 高砂、養老
• - 女神物: 西王母、右近
• - 老神物: 放生川、老松、白楽天
• - 異神物: 東方朔、源太夫
• - 荒神物: 江島、和布刈
• - 唐物: 鶴亀

二番目物

• - 勇士物: 八島、兼平
• - 公達物: 敦盛
• - 老武者物: 実盛、頼政
• - 女武者物: 巴

三番目物

• - 本髭物: 井筒、松風
• - 老女物: 檜垣、姨捨
• - 美男物: 小塩、雲林院
• - 精天仙物: 胡蝶、初雪

四番目物

• - 巫女・女神物: 巻絹、鱗形
• - 執心女物: 梅枝、水無瀬
• - 執心男物: 恋松原、善知鳥
• - 狂女物: 三井寺、隅田川

五番目物

• - 女菩薩物: 当麻
• - 貴人物: 絃上、来殿
• - 猛将物: 草薙、項羽

能は、単なる表現芸術にとどまらず、観衆に深いメッセージを伝えることが求められます。そのため、演者は細かな動作や表情、声のトーンに気を使い、観衆を物語の世界に引き込むのです。これこそが、日本の能が今日まで続けられている理由の一つとも言えるでしょう。

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