南北朝時代 (ベトナム)

ベトナム南北朝時代は、1533年から1592年までの約60年間、ベトナムの歴史において、二つの勢力が対立した時代です。この時代は、黎朝を簒奪した莫登庸（マク・ダン・ズン）によって興された北朝（莫朝）と、黎朝の復興を掲げた阮淦（グエン・キム）が擁立した南朝（中興黎朝）の対立が中心でした。

北朝（莫朝）

莫朝は、莫登庸が黎朝を簒奪して成立しました。首都は東京（ドンキン、現在のハノイ）に置かれ、紅河デルタを中心とした地域を支配しました。莫朝の歴代皇帝は以下の通りです。

太祖 莫登庸（1527年 - 1529年）
太宗 莫登瀛（1529年 - 1540年）
憲宗 莫福海（1540年 - 1546年）
宣宗 莫福源（1546年 - 1564年）
英祖 莫茂洽（1564年 - 1592年）
景宗 莫全（1592年 - 1593年）

莫朝は、初期には安定した統治を行いましたが、次第に南朝との対立が激化し、内紛も起こるようになりました。

南朝（中興黎朝）

南朝は、黎朝の復興を目指す勢力が、阮淦を指導者として、清化（タインホア）を拠点に設立されました。紅河の南側を支配し、北朝に対抗しました。南朝の歴代皇帝は以下の通りです。

荘宗（1533年 - 1548年）
中宗（1548年 - 1556年）
英宗（1556年 - 1573年）
世宗（1573年 - 1599年）

南朝は、莫朝との戦闘を繰り返しながら、勢力を拡大しました。この争いは、ベトナム全土を巻き込む大規模なものとなりました。

南北朝の終焉

1592年、南朝は北朝を破り、東京を奪還しました。これにより、約60年にわたる南北朝時代は終結を迎えました。しかし、莫氏はその後も、中国の明王朝や清王朝の保護を受け、高平（カオバン）で自治を続けました（1677年まで）。また、南朝側も、皇帝を支えていた鄭氏一族と阮氏一族の対立によって分裂し、東京の鄭氏と広南の阮氏による長い分列時代（鄭阮紛争）が始まりました。

影響

南北朝時代は、ベトナムの歴史において重要な転換点となりました。この時代は、単なる王朝の交代劇ではなく、その後のベトナム社会に大きな影響を与えました。特に、鄭氏と阮氏の対立は、その後のベトナムの政治構造や社会構造に大きな変化をもたらしました。

また、中国の一部の歴史書では、この南北朝時代と鄭阮紛争を合わせて「越南南北朝」と呼ぶことがあります。これは、ベトナムにおける政治的な分裂と対立が、中国の歴史と深く関わっていたことを示唆しています。

関連項目

ベトナムの歴史
黎朝
* 莫朝

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