南唐

南唐

南唐（937年 - 975年）は、五代十国時代に江南地方に割拠した国の一つです。首都は江寧（現在の南京）に置かれました。国号は「唐」でしたが、他の「唐」政権と区別するため、「南唐」と呼ばれています。この国は、文化・経済的に繁栄し、十国の中で最大の勢力を誇りましたが、後周や北宋の侵攻により滅亡しました。

歴史

建国

南唐の創始者である李昪（り べん、徐知誥）は、呉の重臣であった徐温の養子でした。徐温の死後、実権を握り、937年に呉の皇帝から禅譲を受けて皇帝に即位し、国号を「斉」としました。その後、自らの出自を唐の皇族であると主張し、国号を「唐」と改めました。李昪は内政を重視し、対外戦争を避けて国力を増強しました。

対外発展

李昪の死後、子の李璟（り けい）が跡を継ぎました。李璟は、父の方針とは異なり、積極的な対外拡張政策を進めました。周辺の国々が内紛で弱体化していたのを見て、945年には閩（びん）を滅ぼし、さらに楚（そ）を併合し、南唐の領土は最大となりました。

衰退

しかし、華北を支配していた後周が中国統一を目指し南進政策を開始すると、南唐は大きな危機に直面します。淮河を挟んで対峙していた南唐は、後周の侵攻を防ぐために冬期に兵力を展開していました。しかし、油断からその警戒を怠った結果、955年に後周軍の侵攻を許してしまいます。その後、連戦連敗を重ね、領土を奪われ、最終的に後周に降伏しました。これにより、南唐は淮河以南の地を割譲し、後周に臣従することを余儀なくされました。

滅亡

その後、後周は北宋に取って代わられましたが、南唐は引き続き宋に服属しました。しかし、宋が中国統一を目指して周辺諸国を次々と滅ぼしていく中で、南唐も標的とされます。974年、宋の太祖（趙匡胤）の出頭命令を拒否したことを理由に、宋軍が侵攻を開始しました。975年、首都の金陵が包囲され、南唐は滅亡しました。最後の皇帝となった李煜（り いく）は、宋の都に連行され、失意のうちに生涯を終えました。

文化

南唐は、五代十国時代において、華北の戦乱を避けて多くの文化人が流入したため、文化が大きく発展しました。特に、李璟と李煜の二人の皇帝は、詞（詩の一種）の名手として知られ、中でも李煜は中国文学史上最高の詞人として評価されています。また、金陵では、澄心堂紙という高級な紙や、李廷珪による最高級の墨が開発され、硯も芸術品として扱われるようになりました。さらに、山水画家の董源（とう げん）や花鳥画家の徐熙（じょ き）といった名だたる画家もこの時代に活躍しました。徐鉉（じょ げん）や韓熙載（かん きさい）といった文人も輩出しています。

経済

南唐は江南地方を安定的に支配し、農業開発を進めました。この時の開発が、後の南宋時代に江南地方が大穀倉地帯となる基礎を築きました。また、淮南では製塩事業を行い、財政を潤しました。さらに、南昌遷都後は、鉄銭を発行しましたが、民衆は銅銭を好んだため、鉄銭の価値は下落し、鉄銭と銅銭の交換比率が変動しました。

南唐の君主

先主（李昪、在位937年 - 943年）
中主（李璟、在位943年 - 961年）
後主（李煜、在位961年 - 975年）

南唐の元号

昇元（937年 - 943年）
保大（943年 - 957年）
中興（958年）
* 交泰（958年）

以降は、後周、北宋の元号を使用。

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