南唐二陵

南唐二陵は、中国の南京市郊外、具体的には中華門の南約22キロメートルの江寧区祖堂山の西南麓に位置しています。ここは、かつて五代十国時代に存在した南唐の初代皇帝である李昪（りべん）と、二代皇帝である李璟（りけい）の陵墓が並んで存在する場所です。

東側に位置する欽陵（きんりょう）は、943年に築造され、李昪とその皇后である宋氏が埋葬されています。全長約21メートル、幅約10メートルと、当時の皇帝陵墓としては比較的大きな規模を誇ります。陵墓内部は、3つの主室と10の側室から構成されており、秦・漢時代の帝王陵墓の規則に沿って建設されました。多数の副葬品が出土していることからも、李昪の権勢をうかがい知ることができます。

一方、欽陵から西に約100メートル離れた場所にある順陵（じゅんりょう）は、961年に築造され、李璟とその皇后である鍾氏が埋葬されています。しかし、李璟の時代には国力が衰退していたため、陵墓は欽陵に比べて規模が縮小され、副葬品も少なくなっています。このことは、当時の南唐の国情を反映していると言えるでしょう。

南唐二陵は、宋代には既に盗掘に遭っていましたが、1950年の発見以降、600点以上の文物が出土しています。この発見は、中華人民共和国成立後、江南地方で初めて発掘された皇帝陵墓であり、中国の統一王朝、地方王朝を含めても、数少ない一般公開されている陵墓として貴重な存在です。その歴史的、文化的な価値から、1988年に全国重点文物保護単位に指定されました。

南唐二陵の発見は、偶然が重なって実現しました。1950年の春、南京の夫子廟市場で骨董品を売る不審な店を警察官が発見し、店主を尋問したところ、その品々が盗掘品であることが判明しました。逮捕された盗掘団の一員の供述から、盗掘の経緯が明らかになりました。

きっかけは、数人の牧童が祖堂山南麓の太子墩と呼ばれる場所で牛を放牧していた際に、雨で崩れた穴を発見したことでした。好奇心から穴の中を探検した牧童たちは、明器や陶俑を発見し、その情報が盗掘者に漏れたことで、墓の副葬品が運び出されたのです。しかし、夫子廟市場で出土品が取引されているところを摘発されたことで、南唐二陵の存在が公になりました。

南京博物院院長の曽昭燏（そうしょうよく。曽国藩の四弟の曽国潢の曾孫娘）は、押収された出土品の鑑定中に、いくつかの玉の破片から金で「維保大元年」と「子嗣皇帝臣瑶」と刻まれた文字を発見しました。保大は李璟の年号であり、瑶は李璟の幼名でした。この発見は直ちに報告書にまとめられ、軍管会主任の劉伯承に報告されました。曽昭燏自身も発掘調査に参加することになり、南唐二陵の本格的な調査が始まったのです。南唐二陵の発掘調査は、中国の考古学史においても重要な転換点となりました。

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