南富田村

南富田村（みなみとんだむら）は、かつて和歌山県西牟婁郡に存在した地方公共団体です。現在の行政区分では、白浜町内の栄地区と中地区にあたり、これらは現在「南白浜地区」という名称で知られています。

地理的には、紀伊半島の南部、富田川の河口南岸に位置し、広大な太平洋に面していました。村の主要な水系としては、富田川が域内を流れ、人々の生活や産業に深く関わっていました。

村の歴史は、1889年（明治22年）4月1日の町村制施行によって始まりました。この時、それまでの栄村と中村が合併し、両村の区域をもって南富田村として新たに発足しました。村はその後、半世紀以上にわたり存続しましたが、その歴史の中で大きな悲劇も経験しています。1937年（昭和12年）12月20日には、村内にあった南富田小学校で痛ましい火災が発生し、児童を含む81名もの尊い命が失われるという、地域にとって忘れられない出来事となりました。

戦後、昭和の大合併の波の中で、南富田村は周辺自治体との再編の道を歩むことになります。村は1955年（昭和30年）3月15日、隣接する白浜町に編入されることとなり、その歴史に幕を閉じました。

この地域は古くから「富田」と呼ばれ、歴史的には東西南北の「四富田」として認識されていました。その後の行政区画の再編においては、各富田村は異なる道をたどりました。西富田村は隣接する田辺市と合併し、一方の東富田村と北富田村は一つになって富田村となりました。南富田村は、これらの他の富田地区に先行して同日に白浜町と合併したという経緯から、現在の「南白浜地区」という呼称が用いられることにつながりました。また、富田地区に位置する小学校の中で、「白浜」の名を冠しているのは、旧南富田小学校である南白浜小学校のみであるという点も、南富田村が辿った特有の歴史を示唆しています。

教育施設としては、かつて白浜町栄の白浜町立富田中学校近隣に白浜町立南白浜幼稚園が存在しました。この幼稚園は後に白浜町十九渕へ移転し、現在は白浜町立富田幼稚園と名称を変えています。前述した南富田小学校も、後の改称により南白浜小学校となったため、現在「南富田小学校」という名称の学校は存在していません。

交通網に関しては、村域には日本国有鉄道（現JR）紀勢西線、現在の紀勢本線が通じており、紀伊富田駅が設置されていました。この駅は地域住民の重要な移動手段として、また物流の拠点として機能し、村の発展を支えました。

このように、南富田村はその短いながらも独自の歴史を刻み、現在の白浜町南白浜地区へと受け継がれています。紀伊富田駅を中心とした地域は今もなお、当時の面影を残しながら変化を続けています。

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