南山古窯跡群

南山古窯跡群：瀬戸市に現存する初期瀬戸窯の貴重な証

愛知県瀬戸市に広がる南山古窯跡群は、瀬戸地方のやきもの生産の歴史を紐解く上で極めて重要な遺跡です。この遺跡は、瀬戸市東部の丘陵地帯に点在する初期瀬戸窯に属し、10世紀後半、西方に位置する猿投窯から窯業技術が伝播したと考えられています。

当初、南山古窯跡群では34基もの窯跡が確認されていましたが、近年の都市開発がその多くを奪いました。瀬戸市水道局の上水道タンク建設工事や、愛知県赤十字血液センターの造成工事など、開発事業に伴い、2号窯、15号窯、34号窯など複数の窯跡が発掘調査された後も、残念ながら滅失してしまいました。さらに、調査すら行われずに消滅した窯跡も複数あると推測されています。開発による遺跡の消失は、歴史的遺産の保全という観点から、大きな課題となっています。

このような状況の中、幾つかの窯跡は辛うじて現存しており、その保存と活用が進められています。特に注目すべきは、南山1号窯です。この窯跡は愛知県陶磁美術館の進入路沿いに位置しており、道路の下に埋没保存されるという方法で、貴重な遺構が守られました。また、南山8号窯と9号窯（9-A～D号窯を含む）は、同美術館の駐車場内に「古窯館」として保存・展示されています。これらの窯跡は、当時の製陶技術や生活様式を知る上で貴重な資料であり、来館者は、実物を通して瀬戸のやきものの歴史に直接触れることができます。

南山古窯跡群は、現存する窯跡の数は限られていますが、初期瀬戸窯の様相を知る上で重要な手がかりを与えてくれます。その歴史的意義を深く理解し、未来へと繋ぐための保全活動の重要性を再認識させられる遺跡です。今後の研究と保存活動によって、失われた窯跡の復元や、より詳細な歴史的背景の解明が期待されます。また、古窯跡群の保存と活用は、瀬戸市の地域活性化にも貢献する可能性を秘めています。遺跡を観光資源として捉え、地域住民と連携した教育プログラムの開発や、博物館などの施設との連携強化などを通して、多くの人が瀬戸のやきものの歴史に親しめるような取り組みが求められています。

南山古窯跡群の存在は、瀬戸が古くからやきものの産地として栄えてきた証であり、その歴史と文化を未来へと繋いでいく上で、極めて重要な役割を担っています。私たちは、この貴重な遺産を次世代へと継承していく責任を共有し、その保護と活用に努めていく必要があります。

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