南極海捕鯨事件

南極海捕鯨事件について

南極海捕鯨事件（英語: Whaling in the Antarctic, フランス語: Affaire du Chasse à la baleine dans l'Antarctique）は、日本による南極海での捕鯨活動に関する国際法上の論争であり、オーストラリアが日本を国際司法裁判所に提訴したことで始まりました。この事件は、日本が国際司法裁判所（ICJ）の紛争当事国となった初のケースでもあり、2010年から2014年にかけて続けられました。

経緯

捕鯨に対する国際的な批判が高まる中、1982年に国際捕鯨委員会（IWC）で商業捕鯨モラトリアムが採択されました。これにより、1985/86年の捕鯨シーズンから大型鯨類の商業捕獲は禁止されました。日本は、国際捕鯨取締条約第8条を根拠として調査捕鯨を行う特別許可を申請し、1987年から「南極海における調査捕鯨（JARPA I）」を開始しました。その後、日本は2005/06シーズンからより広範な捕鯨計画「JARPA II」を実施し、捕獲頭数を増大させながら南極海での調査を続けましたが、これに対する反発が高まりました。

2007年、IWCは日本に対して特定海域での捕鯨を一時中断する決議を採択しましたが、日本はこれに従わず、捕鯨を継続しました。日本の調査捕鯨は国際的な議論の的となり、特にオーストラリアは日本の捕鯨に対し法的措置を取る公約を掲げる政権が誕生しました。2010年、オーストラリアは日本を国際司法裁判所に提訴しました。

法的背景

オーストラリアの提訴は、国際司法裁判所規程に基づき行われ、双方の国はそれぞれ異なる主張をしました。オーストラリアは、日本の調査捕鯨が商業捕鯨禁止のルールに反していると主張し、その調査が科学的目的に基づいていないことを指摘しました。一方で、日本は、自国の調査捕鯨が国際的な法律に従ったものであり、科学研究を目的としていると主張しました。

裁判の経過

裁判は2013年6月に始まり、オーストラリア側が日本の捕鯨活動の証拠を提示し、その後、日本が反論するという形で進行しました。両国の主張はそれぞれの科学者や法律専門家によって裏付けられましたが、国際司法裁判所は日本側の主張が科学的に不十分であると判断しました。特に、捕獲頭数の算定や非致死的調査についての日本の取り組みには疑問が呈されました。

判決とその影響

2014年3月、国際司法裁判所は日本の調査捕鯨に関する判決を下しました。判決内容は、日本のJARPA IIに関する計画が科学的調査として妥当であることを証明できなかったとし、捕獲の許可が国際捕鯨取締条約第8条に則ったものでないと結論づけました。この結果、日本は調査捕鯨を終了せざるを得なくなりました。

判決を受け、日本政府は失望の意を表明しつつも、その内容には従う姿勢を示しました。この事件を契機に日本は捕鯨政策を見直し、2018年には国際捕鯨取締条約からの脱退を決定し、商業捕鯨を再開することとなりました。

南極海捕鯨事件は、捕鯨問題における国際的な枠組みと環境保護の視点を考える上で重要な意義を持ちながら、今後の捕鯨に対する国際社会の姿勢にも影響を与えることになるでしょう。

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