南部僑一郎

南部 僑一郎について

南部 僑一郎（なんぶ きょういちろう）は、1904年4月6日に福岡県小倉市で生まれました。彼の本名は杉田 實（すぎた みのる）であり、後に映画評論家や脚本家として広く知られるようになります。彼は旧姓を鍋山とし、その生涯を通じて日本の映画界に多大な影響を与えました。

学歴と初期活動

彼は旧制・第五高等学校を卒業後、1923年に東京に移り、東京帝國大學の印度哲学科に入学します。しかし、在学中に福岡の炭鉱争議を支援する活動に参加したことで逮捕され、その際に大怪我を負い、左目を失明します。結果的に彼は大学を中途退学し、社会運動に深く関わることになります。

1927年には内藤宸策のもとで、日本演芸通信の京都支局長として短歌や詩の編集に従事し、同年に阪東妻三郎プロダクションに参加。ここから彼の映画界での活動が本格的に始まることになります。また、彼はルポルタージュ記者としても多くの映画雑誌で活動を行い、撮影所の裏話やゴシップを数多く伝えました。

映画脚本家としての歩み

1932年には独立プロダクションである富国映画社の設立に参画し、サイレント映画『安政大獄』の原作を提供。また、1933年にはトーキー映画に進出し、木下トーキープロダクションにて『ホロリ涙の一ト雫』の原作も手がけます。こうして、彼の名は徐々に広まり、映画業界において確固たる地位を築いていくことになります。

個性的な人物像

南部は「映画評論家」と呼ばれることを好まず、「ヒョーロンカに非ず、映画評判家じゃ」と自身を称していました。彼は映画の楽しみ方やその魅力を多様に語り、撮影所で禁じられた活動をいとも簡単にこなすような自由な精神の持ち主でした。撮影所の関係者と良好な関係を築き、多くの映画人から信頼を寄せられました。特に嵐寛寿郎との親交は深く、彼にとって唯一心を開けた存在でした。

彼は自分を「文筆家」としてではなく、終生「わしは売文業だ」と述べ続けた背景には、生活のために書く商売であるという正直な姿勢が表れています。特に、映画に対する情熱を持ちながらも、商業的な側面からも目をそらさず、生涯にわたり様々な職業で活躍しました。

主な作品

彼が手がけた映画や書籍には、多くの名作が含まれており、『安政大獄』（1932年）や『ホロリ涙の一ト雫』（1933年）以外にも、彼の文筆活動は多岐にわたります。彼は『結婚行進曲 (スターロマンス)』（1949年）や『映画俳優入門』（1951年）など、多数の書籍も執筆しました。彼の作品はしばしば時代を反映し、映画文化の発展に寄与しています。

最晩年と遺産

南部僑一郎は1975年2月16日に亡くなり、70歳での生涯を閉じました。彼の活動と影響は現在においてもなお語り継がれており、多くの映画人や批評家にとって彼の存在は欠かせないものとされています。南部の独特な視点と彼が築き上げた数多くの作品は、日本映画界の歴史の一部として、今後も尊重され続けることでしょう。

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