南部利用 (大膳大夫)

南部利用の生涯と藩主としての役割

南部利用（なんぶ としもち）は、江戸時代後期における陸奥国盛岡藩の第11代藩主です。彼はその生涯の中で替え玉として藩主に擁立され、不運にも短い任期で波乱に満ちた時代を生きました。ここでは、彼の誕生から最後までの人生を詳しく見ていきます。

生い立ちと擁立

享和3年（1803年）の11月6日、南部信浄の三男として盛岡で生まれた善太郎（後の南部利用）は、血統上の正当な藩主である吉次郎と見た目が非常に似ていました。吉次郎は兄弟の中で一家の後継者として期待されていましたが、文政4年（1821年）8月に不慮の事故で命を落としました。当時、彼はまだ若く、将軍家に対面する機会もなかったため、後継者の届け出も行われていませんでした。

これを受けて、藩の重役たちは急速に動き出します。吉次郎の早すぎる死が藩に深刻な影響を及ぼすことを懸念していた彼らは、善太郎を替え玉として立てることに決定しました。彼は9月に「南部利用」として擁立され、11月には第11代藩主として家斉将軍に御目見えを果たします。

藩政と人事改革

利用は即位後、藩政に急いで取り組み始めました。彼は先代の利敬の時代に不正が横行し、厳しい統治が行われていたことを踏まえ、様々な改革を試みました。特に、利敬政権で冷遇されていた門閥家老層を再登用し、彼らと協力しながら藩政を立て直すことを目指しました。これにより、藩の安定した運営が実現され、窮乏する藩士を救済する政策も打ち出されました。

文政5年（1822年）には、前年に発生した相馬大作事件に関与した相馬大作が江戸で斬首される事態が起こります。また、同年、利用は自身に万が一のことがあった場合の後継者として、南部修礼（のちの利済）を推薦しました。彼は藩の未来を真剣に考えていたことが窺えます。

最後の日々

文政8年（1825年）、利用は病気を抱えながらも江戸に参勤しましたが、健康を損ね、同年7月18日に江戸で死去しました。享年はわずか23歳であり、彼の在任期間は短くも波乱に満ちたものでした。南部利用は、5代藩主・信恩の血統としては最後の藩主となり、実子が娘の豊子のみであったため、彼の後を継いだのは内願通り利済でした。

系譜と後継者

南部利用の家系は複雑で、公式には彼の父とされる南部信丞は1人目の南部利用の実父であり、彼自身の養父である南部利敬は過去の藩主でもありました。利用の家族構成には、正室として前田斉広の娘があり、また側室も数人おり、女子二人を持ちました。中でも、彼の娘である豊子は、後に南部利義の正室となりました。

このように、南部利用は江戸時代後期の盛岡藩において、非常に特殊な立場にあった藩主です。彼の短命とは裏腹に、その影響や取り組みは藩の歴史に色濃く刻まれています。

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