南風 (1933年の映画)

1933年公開のアメリカ映画『南風(みなみかぜ) The Stranger's Return』は、自然と人間の営みを見事に描いた作品として知られています。名匠キング・ヴィダー監督がメガホンを取り、1934年度キネマ旬報ベストテンで4位にランクインするなど、高い評価を獲得しました。

映画は85歳の老農夫サイラス・ストールの物語を中心に展開します。彼はルイーズという孫娘と静かに暮らしていますが、隣家の農場主ガイ・クレインとの間には、長年続いた確執が影を落としています。サイラスの過去、家族、そして周囲の人々との複雑な人間関係が、丁寧に描かれています。

サイラスの家に仕える下男サイマン、サイラスの死んだ甥の妻ベアトリス、サイラスの妻の連れ子セルマとその夫である弁護士アレン・レッドフィールドなど、個性豊かな登場人物たちが物語を彩ります。さらに、ガイの妻ネティと息子ウィディも登場し、農場を舞台にした人間模様は、時にユーモラスに、時に切なく展開します。

監督は数々の名作を世に送り出したキング・ヴィダー。彼の繊細な演出によって、アメリカ中西部の広大な田園風景と、そこで暮らす人々の生活が生き生きと描かれています。自然の移ろい、そして人間の温かさや葛藤が、美しい映像とともに観客の心に響きます。

本作の原作と脚本を手掛けたのは、郷土文学作家として知られるフィル・ストングです。彼は『ステイト・フェア(State Fair)』でも有名ですが、本作にも深い理解と愛情を持って関わっています。映画『ステイト・フェア』は、戦前に「あめりか祭」という邦題で公開され、戦後にはミュージカルとして「ステート・フェア」の題名で再映画化されました。

『南風』は、単なる田舎物語にとどまらず、人間の生と死、家族の絆、そして隣人との関係といった普遍的なテーマを深く掘り下げています。老農夫サイラスの静かな生き様、そして彼を取り巻く人々のドラマを通して、人生の様々な側面が映し出されます。

ライオネル・バリモア、ミリアム・ホプキンス、フランチョット・トーンなど、当時の実力派俳優たちが集結し、それぞれの役どころを熱演しています。彼らの演技は、物語に深みとリアリティを与え、観る者の心を強く掴みます。

キャストとスタッフのクレジットは以下の通りです。

サイラス・ストール：ライオネル・バリモア
ルイーズ：ミリアム・ホプキンス
ガイ・クレイン：フランチョット・トーン
サイマン：スチュアート・アーウィン
ベアトリス：ボーラ・ボンディ
アレン・レッドフィールド：グラント・ミッチェル
セルマ：アイリーン・カーライル
ネティ・クレイン：アイリーン・ハーベイ
ウィディ：タッド・アレクサンダー
監督：キング・ヴィダー
脚色：ブラウン・ホームズ、フィル・ストング
原作：フィル・ストング
撮影：ウィリアム・H・ダニエルズ
アソシエイト・プロデューサー：ルシアン・ハバード

『南風』は、時代を超えて多くの人々に感動を与え続ける、忘れがたい名作です。静かに流れる時間、そして人間模様の機微に、じっくりと浸ってみてください。

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