単安仁

単安仁の生涯：激動の時代を生き抜いた官僚・軍人

単安仁（ぜん あんじん）は、1303年に生まれ、1388年に没した、元末から明初にかけての官僚・軍人です。字は徳夫といい、本貫は濠州にあります。激動の時代を生き抜き、明王朝の創設と発展に大きく貢献しました。

元末の動乱期

若くして府吏となった単安仁は、元末の混乱期に頭角を現します。各地で反乱が勃発する中、彼は義兵を集めて郷里を守り、その功績により枢密判官に任じられます。その後、元の鎮南王ボロト・ブカに従い、揚州の守備にあたります。しかし、ボロト・ブカが長槍軍に敗れて追放されると、単安仁は帰属先を失い孤立してしまいます。

明への帰順

そんな中、朱元璋が南京を平定したという知らせを聞いた単安仁は、「これに忠誠を捧げるのみだ」と決意し、自らの軍を率いて朱元璋に帰順します。その忠誠心と軍事力は高く評価され、鎮江の守備を命じられました。単安仁の軍隊は規律が厳正であり、敵も容易には手出しできなかったと言われています。その後、常州へ移って守備にあたります。彼の息子が張士誠に降伏するという事件が起きますが、朱元璋は単安仁の忠誠心を疑うことはありませんでした。

明朝での活躍

長きに渡り忠誠を尽くした単安仁は、浙江副使に転じます。当時、気の荒い軍人が民衆から収奪する「寨糧」が問題になっていましたが、彼はこれを法により制度化することで、民衆の負担を軽減しました。その後、浙江按察使に進み、さらに中書左司郎中として南京に召還され、李善長を補佐して裁断にあたります。瑞州守禦千戸に任じられた後、入朝して将作卿となります。

洪武元年（1368年）、単安仁は将作事を兼ねたまま、工部尚書に抜擢されます。彼は細心敏捷で知略に優れており、大小様々な営造事業を滞りなく進め、洪武帝（朱元璋）の信頼を得ました。翌年には兵部尚書に転じます。老齢を理由に引退を願い出ますが、洪武帝はこれを許さず、3000畝の田と70頭の牛、そして尚書の年俸の半分を支給することを決定しました。

引退後の活動と最期

洪武6年（1373年）、山東参政として再び起用されますが、丁重に辞退し、許されます。引退後も、単安仁は国の為に尽力することを忘れず、儀真南壩から樸樹湾までの河川を浚渫し、官民の輸送を便利にするよう奏請しました。また、運河の江都の深港を防衛のために浅港に移転すること、瓜洲の食糧倉庫を揚子橋の西に移転することを提言し、長江の風潮による被害を防ぐよう訴えました。これらの提言は洪武帝に賞賛され、再び兵部尚書に任じられます。引退後も尚書として正三品の位を与えられ、洪武13年（1380年）には中書省が廃止された際、正二品に進められました。洪武20年（1387年）には、特別に資善大夫の位を与えられました。

同年12月壬子（1388年1月15日）、単安仁は85歳でその生涯を閉じました。彼の功績は明王朝の発展に大きく貢献し、後世に語り継がれています。

参考文献

• - 『明史』巻138 列伝第26

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