単意論

単意論について

単意論とは、キリストの人格に一つの意志しかないとする教義であり、ギリシャ語では「Μονοθελητισμός」と呼ばれています。この考え方は7世紀に現れ、特にキリスト教の教義の中で重要な位置を占めていました。単意論は、神人両性を認める一方で、キリストの意志が一つであるとする点に特徴があります。

歴史的背景

この思想は東ローマ帝国の状況と密接に関連しており、統一を図る過程で両性論者と単性論者の間の折衷案として提唱されました。624年には、キリストが持つ神性と人性を保ちながらも、唯一の行動様式だけを持つとする考え方が示されました。しかし、エルサレム総主教ソフロニオスが強く反対したため、議論が続きました。

ローマ教皇ホノリウス1世とコンスタンディヌーポリ総主教セルギオス1世が共同で編集したエクテシス（信仰宣言）では、行動様式という用語は使用されず、キリストの単一の意志を強調しました。この文書は単意論の主要な根拠となり、以後「意志」（ギリシャ語: θέλημα）という言葉が頻繁に用いられるようになりました。このため、単意論の名前も「意志」という言葉に由来しています。

論争と異端認定

単意論は最初のころは一部の地方公会から支持を受けていましたが、641年のローマでの公会議や649年のラテラン公会議で異端とされました。679年には第3コンスタンティノポリス公会議において、単意論が正式に異端とされたことにより、一連の論争は一応の終息を見せました。この公会議では、セルギオス1世やホノリウス1世も断罪され、彼らの思想が広まることを阻止されました。

反対派の立場

単意論に対抗した著名な聖人には、先に触れたソフロニオスをはじめ、表信者・証聖者マクシモスやローマ教皇マルティヌス1世がいます。彼らは皇帝コンスタンス2世からの弾圧を受けた結果、苦痛や流刑を経験しました。聖マクシモスは舌と右手を切られ、流刑にされるという厳しい罰を受けました。聖マルティヌスも流刑に処されたため、彼らの苦悩は単意論を巡る教義対立の激しさを物語っています。

このように、単意論はキリスト教の歴史の中で重要な役割を果たしました。最終的には異端として扱われることとなりましたが、その根源にある思想は、キリスト教の信仰における神秘的テーマの一つとして今もなお研究されています。

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