単板ガラス

単板ガラスとは

単板ガラス（たんばんガラス）とは、単一の板からなるガラスを指し、複数の板を重ね合わせた複層ガラスと対比される用語です。かつては、表面に用いられるガラスは単板ガラスであると認識されていましたが、複層ガラスの普及に伴い、単一の板ガラスであることを明確にするためにこの呼称が用いられるようになりました。

歴史

単板ガラスの歴史を振り返ると、紀元前8世紀にイタリアのポンペイで大浴場の窓に使われた鋳造法が最古の例とされています。続いて、4世紀から7世紀のシリアでの吹きガラス技術の発展を経て、クラウン法が登場し、透明度の高い窓ガラスが製造可能となりました。

17世紀末には、フランスのサンゴバンにおいて大型の鋳造法が実用化され、ヴェルサイユ宮殿の鏡の間にも多くの磨きガラスが使用されました。産業革命を迎えたイギリスでは、円筒形のガラスを扱う円筒法による大量生産が実現し、クリスタルパレスの建設に寄与しました。

日本でも、明治時代に板ガラスが多く用いられましたが、当時は高価な輸入品がほとんどでした。1909年に旭硝子がベルギーから円筒法を導入し、国産ガラスの生産が始まりました。しかし第一次世界大戦を経て、日本のガラス製造業は一層の国産化へと向かいました。

1915年には、ベルギーとアメリカで新たな製法が実用化され、溶解したガラスを垂直に引き上げて板状のガラスを作る技術が確立されました。日本では1920年に日本板硝子がこの方法を導入し、薄い板ガラスが障子などに利用されるようになりました。続く1920年代には、アメリカでロール法が、1950年にはイギリスでフロート法が開発され、より大きく高透過のガラスが生産可能になりました。

日本でも1965年からフロート法が広まり、単板ガラスは進化していきました。

特徴

単板ガラスは住宅の建具や家具、自動車など幅広い用途で利用されています。その特性として、複数の層のガラスより安価なため広く使われていますが、単独で使用すると断熱性が低く、結露が発生する可能性があるため、居住空間の快適性に影響を与えやすいです。

また、防音性能はあまり期待できず、厚さを増すことで改善することは可能ですが、完全な静音を求めるには限界があります。最近では、防犯性に優れた合わせガラスや高い断熱性を持つ複層ガラスが増えてきたことも影響し、鉄道車両などでは以前に比べて単板ガラスの使用が減少しています。

このように、単板ガラスはその歴史的背景とともに、さまざまな用途に適した特性を有しつつ、近年の市場動向に影響を受ける重要な素材として位置づけられています。

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