単純承認

単純承認とは

単純承認とは、民法に定められた相続に関する用語で、相続人が被相続人の財産や権利、義務を無条件に引き継ぐことを意味します。

単純承認の概要

民法920条において、単純承認は被相続人の権利義務を無限定に承継すると規定されています。これは、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も全て引き継ぐことを意味します。相続人は、相続開始を知った時から一定期間内に相続放棄または限定承認の手続きをしなければ、単純承認をしたとみなされます。

法定単純承認とは

民法921条には、特定の状況下で相続人が単純承認したものとみなされる「法定単純承認」について規定されています。これは、相続人の意思表示に関わらず、法律の規定によって単純承認の効果が生じるものです。主な法定単純承認事由は以下の通りです。

1. 相続財産の処分: 相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、原則として単純承認とみなされます。ただし、財産の保存に必要な行為や、民法602条に定める期間を超えない短期の賃貸は例外とされます。
2. 熟慮期間の経過: 相続人は、相続開始を知った時から3ヶ月以内（熟慮期間）に相続放棄または限定承認の手続きをする必要があります。この期間内に手続きを行わなかった場合、単純承認をしたものとみなされます。
3. 相続財産の隠匿・消費: 相続人が限定承認または相続放棄をした後であっても、相続財産を隠匿したり、私的に消費したり、悪意を持って財産目録に記載しなかった場合、単純承認とみなされます。ただし、その相続人が相続放棄をしたことによって新たに相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りではありません。

熟慮期間について

熟慮期間は、相続人が相続について慎重に検討するための期間です。通常は、相続の開始を知った時から3ヶ月以内ですが、家庭裁判所に申し立てることで期間を延長することも可能です。熟慮期間内に相続放棄または限定承認の手続きを行わなかった場合、単純承認をしたとみなされます。ただし、相続財産が全く存在しないと信じる相当な理由があった場合には、相続人が財産の存在を認識した時点から熟慮期間が起算されるという例外的な判例も存在します。

単純承認の注意点

単純承認は、相続人が被相続人の財産を全て引き継ぐことを意味するため、相続財産に借金などのマイナスの財産が多い場合には、相続人の生活に大きな影響を与える可能性があります。そのため、相続人は熟慮期間内に相続財産の状況を十分に調査し、相続放棄や限定承認といった他の選択肢も検討することが重要です。

関連用語

限定承認: 相続によって得た財産の範囲内で、被相続人の債務を弁済する相続方法です。
相続放棄: 相続人が相続に関する一切の権利を放棄する手続きです。

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