限定承認

限定承認とは

限定承認とは、民法で定められた相続方法の一つで、相続人が相続によって得た財産の範囲内でのみ、被相続人の債務や遺贈を弁済する責任を負う制度です。つまり、相続財産がマイナスの場合でも、相続人は自己の財産を失うことなく相続できます。

限定承認の手続き

限定承認を行うには、相続人全員が共同で、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。申述の際には、相続財産の目録を作成・提出しなければなりません。

手続きは相続放棄と比べて煩雑で、以下のステップを踏む必要があります。

1. 相続人全員での共同申述: 相続人が複数いる場合、全員が共同で限定承認の手続きを行う必要があります。
2. 相続財産目録の作成: 相続財産の詳細な目録を作成し、家庭裁判所に提出します。
3. 債権者への公告・催告: 相続人は、すべての相続債権者と受遺者に対し、2ヶ月以上の期間を定めて限定承認を行った旨を公告し、知れている債権者には個別に催告を行う必要があります。
4. 債務の弁済: 公告期間満了後、相続財産の範囲内で、債権額に応じて債権者に弁済を行います。
5. 残余財産の分配: 債務を弁済後、残余財産があれば、相続分に応じて相続人に分配されます。

限定承認のメリット

限定承認の最大のメリットは、相続財産を超える債務を相続しなくて済む点です。また、相続財産の中にどうしても手に入れたい財産（例えば、自宅や事業に必要な財産）がある場合に、競売を避けて適正な価格で取得できる可能性があります。

限定承認のデメリット

限定承認は、手続きが煩雑で、相続人に多くの事務処理を強いるため、敬遠される傾向があります。また、限定承認によって相続した資産については、相続時に譲渡があったとみなされ、譲渡所得税が課税される場合があります。

限定承認と税務

限定承認の場合、相続税に加えて譲渡所得税が発生する可能性があります。これは、相続財産を時価で譲渡したとみなされるためです。ただし、この譲渡所得税は、相続財産の範囲内で支払うことができます。

まとめ

限定承認は、相続財産がプラスかマイナスか不明な場合や、特定の財産を確実に取得したい場合に有効な手段です。しかし、手続きが煩雑で税務上の注意点もあるため、専門家と相談しながら慎重に検討することをおすすめします。

関連項目

相続
単純承認
* 相続放棄

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