単記非移譲式投票

単記非移譲式投票の概念と仕組み

単記非移譲式投票（SNTV）は、投票システムの一種であり、各有権者は1人の候補者にのみ投票します。このシステムでは、得票数が多い順に所定人数の候補者が当選します。例えば、4議席の選挙区では、得票数上位4名が当選します。この方式の特徴として、他の候補への票や当選が決まった候補の余剰得票が移譲されず、そのまま死票として残る点が挙げられます。

単記非移譲式投票の詳細

仕組みと特徴

この投票制度は、特に候補者数が多い時に競争が激しくなる傾向があります。例えば、5人の候補者が3議席を争う場合、得票の結果次第で当選者が異なる状況が生じます。政党ごとに票を分析すると、A党がB党より多くの票を得ても、候補者間での票の配分が不均衡であれば、獲得議席数が必ずしも増えないこともあります。このように、各政党は自党の戦略を考慮する必要があります。

比例代表との関係

この制度は、比例代表制と似た結果を生む可能性があります。許される得票数の条件を満たす限り、候補者は当選が期待できます。しかし、各政党がその力量に基づいた候補者数を正確に決定するのは難しく、自党が取り込む候補者数や他党との競争状況を見極める必要があります。これが難しさの一因となり、失敗すれば票が分散したり無駄票が出る可能性があります。

戦略投票との関係

単記非移譲式投票の特徴は、有権者が戦略的に投票を行う可能性を高めることです。有権者は自らの票が無駄にならないよう、当落線上にいる候補者に投票することを選ぶかもしれません。この観点では、特定候補者に対する票の集中が避けられ、全体的な得票率の均衡が保たれる可能性が生まれます。

候補者の立場

選挙では、候補者は自身の支持を得るために、他の候補者と競争しなければなりません。このため、選挙戦略や後援会の組織化が重要となります。特に中選挙区制においては、党内での意思統一や票をどう配分するかが勝敗に直結し、場合によっては自党の候補者同士でも票を奪い合うことになります。

各国および地域の実例

現在、単記非移譲式投票が採用されている国や地域には、アフガニスタンの人民議会やインドネシアの地方代表議会が含まれます。また、台湾やトンガ、日本の地方議会でも使用されています。過去には韓国の国会でもこの方式が採用されていましたが、近年は小選挙区比例代表並立制などが導入されるなど、各国で制度が変化しています。

まとめ

単記非移譲式投票は、多様な要因や戦略が絡む選挙制度であり、一見シンプルな仕組みでもその内部には深い複雑さが隠れています。この制度がもたらす結果は、候補者の戦略や有権者の投票行動によって大きく変わる可能性があり、その本質を理解することでより良い選挙制度の設計に寄与することができるでしょう。

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