博多阪急

博多阪急

福岡県福岡市博多区に位置する博多阪急は、阪急阪神百貨店が運営する百貨店です。九州最大のターミナル駅である博多駅の博多口に建つ駅ビル「JR博多シティ」内にあり、アミュプラザ博多と共に、この大型複合施設の核テナントとして重要な役割を担っています。博多エリアにおいては、唯一の百貨店として存在感を放っています。

概要と店舗構造

博多阪急は、JR博多シティの南側に位置する地下1階から地上8階部分に店舗を構え、隣接するファッションビルのアミュプラザ博多とも直結しています。駅ビルはJR九州の在来線ホーム上に約60メートルせり出した特殊な構造を持つため、ホーム階にあたる2階は他のフロアに比べて売場スペースが限られています。また、一部に中3階フロアも設けられています。駅ビル内に新設された複数の通路や連絡口（地下1階のアミュ地下、1階のサブコンコース、3階の博多シティ3階改札口、4階の屋上駐車場など）とも直接結ばれており、駅利用者にとって高い利便性を実現しています。

独自の戦略とコンセプト

博多阪急は、従来の百貨店の枠にとらわれない独自のコンセプトと戦略を展開しています。兵庫県西宮市にある西宮阪急で成功を収めた「暮らしの学校」というコンセプトを導入。各売場には「コトコトステージ」と呼ばれる顧客参加型のイベントスペースが設けられ、調理教室や食育、着こなし方やコーディネートに関する講座など、取扱商品に関連した様々なイベントが開催されています。これにより、単に商品を販売するだけでなく、生活シーンや商品の多様な使用価値を提案することに注力しています。2階を除く全フロアに大小20カ所ものコトコトステージが設置されており、店舗面積の約15%が物販以外の空間に充てられています。また、男性向けのパーソナルコーディネートサービスを導入するなど、体験や提案型のサービス機能にも力を入れています。

商品構成においても、従来の百貨店とは一線を画しています。特に20代の若い女性層をターゲットに、ファッションビルと同等の低価格帯のレディスファッションを集めた「ハカタシスターズ」を設けています。高額な高級婦人服を扱う特選売場はあえて設置せず、主力となる婦人服売場の商品単価を1万円未満に抑えるなど、低単価でも頻繁な来店を促す商品戦略を展開しています。さらに、大都市圏の主要百貨店で一般的とされる、富裕層や法人向けの「外商」サービスを設けないなど、開業当初は独自の営業戦略を採っていた点も特徴的でした。

主なテナント

店舗内には、ルイ・ヴィトン、ティファニー、エルメス、グッチといった国内外のハイブランドから、アルファエー、ドロシーズ、ノジェス、イペールシックTOKYOといったファッションブランドまで、幅広いテナントが出店しています。また、食料品フロアの地下1階にある「阪急うまか食堂」内には、阪神百貨店名物のいか焼き売り場があり、大阪スタイルのいか焼きを楽しむことができます。喫茶・軽食では、九州地区初出店となった丸福珈琲店なども人気を集めています。

歴史

博多阪急の開業は、老朽化した3代目博多駅ビルの再開発計画に端を発します。2007年から始まったこの再開発において、新駅ビルの核テナントの座を巡り、旧駅ビルで営業していた博多井筒屋に加え、阪急百貨店と高島屋が誘致候補となりました。当初、JR九州は高島屋との交渉を進めていましたが、売場面積の構成などで折り合いがつかず難航。これにより、急遽阪急百貨店との協議に切り替えられました。旧駅ビルで営業していた博多井筒屋は、新ビルへの出店継続を強く希望しましたが、JR九州の方針転換により交渉は不調に終わり、最終的に45億円の補償金を受け取り、2007年3月末に閉店しました。

一方、阪急百貨店は2006年4月にJR九州との正式合意を発表。JR側は、食品やファッションに強く、ターミナル駅での店舗運営に長けた阪急に魅力を感じたといいます。しかし、当時の阪急百貨店は九州での知名度が低く、出店規模も福岡の既存百貨店（岩田屋、博多大丸）に比べて小さかったこと、また梅田本店建て替えなどで社内リソースが限られていたことから、その成功を危ぶむ声もありました。

開業以降の推移

2011年3月3日、JR博多シティの開業と同時に博多阪急は九州に初進出を果たしました。1日約35万人が利用する九州最大のターミナル駅という立地の利便性を背景に、JR博多シティ全体で開業初日に約22.2万人を集めるなど、高い集客力を示しました。博多阪急が導入した低単価ファッションなどの戦略は、開業半年後には天神地区の百貨店やファッションビルにも影響を与え、特にファッションビルでは客足の落ち込みが見られました。

開業から半年間で、博多阪急の来店客数は想定の1.5倍となる約1,820万人に達しましたが、売上は計画を約8%上回る約200億円に留まり、客単価が想定より低いという課題が明らかになりました。このため、クレジットカード会員を増やすなど、固定客を育成し単価の向上を目指す取り組みが行われました。年間を通して初めて営業した2012年3月期には、売上高が約372.59億円と初年度目標を達成。運営会社であるエイチ・ツー・オー リテイリングの連結業績にも貢献しました。その後も順調に成長を続け、2014年3月期には売上高が404億円に達し、当初目標を突破しました。

近年においても成長は著しく、2022年度には売上高506億円を記録し、博多大丸を上回りました。2023年度には623億円に達するなど、開業から比較的新しい店舗ながら、福岡の百貨店市場において岩田屋本店に次ぐ第2位の地位を確立しています。

その他、かつてはHAKATA SISTERS cafe内にUstreamスタジオが設置されていた時期もありましたが、2016年に閉店しました。また、クレジットカードに関しても、当初は独自のカードを採用していましたが、現在は他の阪急阪神百貨店と同様のペルソナSTACIAカードなどへの切り替えが進められています。

関連項目

エイチ・ツー・オー リテイリング（阪急阪神百貨店）
阪急百貨店
神戸阪急（JR駅ビルに出店）
近鉄百貨店和歌山店（JR駅ビルに出店する電鉄系百貨店）
博多井筒屋（旧駅ビルの核テナント）
岩田屋（福岡の主要百貨店でありライバル）

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