卜部喜太郎

卜部喜太郎（うらべ きたろう）

生涯

卜部喜太郎は、1868年（明治元年）に埼玉県で生まれました。幼少期から聡明で、18歳で小学校教員の資格を得て本庄小学校に勤務しました。その後、1888年に上京し、英吉利法律学校（現在の中央大学）で法律を学び、1890年に優秀な成績で卒業。代言人試験にも合格し、弁護士としての道を歩み始めました。

弁護士としての活動

喜太郎は、弁護士として数々の重要な事件に関わりました。特に有名なのは、「足尾鉱毒事件」や「シーメンス事件」です。これらの事件では、困難な状況の中でも、その弁護手腕を発揮し、多くの人々に影響を与えました。また、関東大震災後の混乱の中で起きた本庄事件では主任弁護士を務め、事件の解決に尽力しました。

喜太郎は、東京法学院で発行する法学新報の編集にも携わるなど、法曹界の発展にも貢献しました。また、同志と江湖倶楽部を組織し、交流を深めました。

政治家としての活動

1908年（明治41年）、喜太郎は衆議院議員に選出され、政界に進出しました。所属は又新会、国民党でした。しかし、家庭の事情により、議員としての活動は一期のみにとどまりました。

その後の経歴

政治家を退いた後も、喜太郎は東京弁護士会で活躍し、1920年に常議員会議長、1921年には会長に就任しました。また、法律取調委員にも任命され、法曹界の重鎮としてその存在感を示しました。

晩年

1934年（昭和9年）に軽い病に倒れ入院したものの、その後病状が悪化。1942年（昭和17年）に75歳で亡くなりました。その生涯は、正義を貫き、社会に貢献したものでした。墓所は、故郷の沼和田宝輪寺にあります。

人物像

喜太郎は、その性格は豁達で豪胆であり、智略に富んでいたと伝えられています。民権自由を主張し、官憲の圧力にも屈しなかったといいます。また、義理堅く情に厚い人柄で、多くの人々から信頼を得ていました。

家族

父は卜部喜平、妻はきち。養子に貞、ひさ、静がいます。貞は喜平の四男で、旭村長を務めました。

参考文献

『衆議院要覧 明治41年12月訂正』衆議院事務局、1897 - 1909年。
東恵仁編『明治弁護士列伝 肖像入』周弘社、1898年。
真船多吉編『改正日本弁護士名簿』日本弁護士協会、1908年。
『第二十七回衆議院重要問題名士演説集2』帝国議会要史編纂所、1911年。
人事興信所編『人事興信録 第5版』人事興信所、1918年。
人事興信所編『人事興信録 第9版』人事興信所、1931年。
人事興信所編『人事興信録 第10版 上』人事興信所、1934年。
東京弁護士会事務所編『東京弁護士会史』東京弁護士会事務所、1935年。
衆議院事務局編『衆議院議員略歴 第1回乃至第19回』衆議院事務局、1936年。
衆議院、参議院編『議会制度七十年史 第11』大蔵省印刷局、1962年。
* 『武州本庄宿ふるさと人物史1』。

もう一度検索