印旛放水路

印旛放水路の詳細解説

印旛放水路は、千葉県に位置する印旛沼の排水を主な目的として建設された、全長約19キロメートルに及ぶ放水路です。この放水路は、西印旛沼からの流出地点である八千代市阿宗橋を起点とし、千葉市美浜区で東京湾に注ぎます。上流が利根川に繋がっているため、利根川水系の一級河川として指定されています。

印旛放水路の概要

江戸時代の利根川東遷事業により、利根川と印旛沼が繋がったことで、印旛沼周辺は洪水の被害に悩まされるようになりました。この問題を解決するため、印旛沼の水を東京湾へ排水する目的で印旛放水路が建設されました。

特筆すべきは、中間地点に位置する大和田排水機場です。この施設は、印旛沼の水を一度汲み上げ、分水界を越えて東京湾へ排水するという、特殊な構造を持つ放水路です。印旛沼側の新川と東京湾側の花見川を合わせたものが「印旛放水路」と呼ばれています。

河川管理上では、大和田排水機場より低い位置にある新川が、印旛放水路の上流とされています。これは、排水が新川から花見川へと一方通行で行われるためです。

新川について

新川は、八千代市阿宗橋付近から大和田排水機場までの区間を指し、「印旛疏水路」とも呼ばれます。この区間は、西印旛沼とほぼ同じ水位を保っており、大和田排水機場から花見川への排水は、一定の水位を超えない限り原則として行われません。新川にはいくつかの中小河川が流入しますが、川自体にはほとんど流れがなく、西印旛沼の延長部分のような状態です。

通常は印旛沼方面へ水が流れますが、大雨などで印旛沼が増水した際には、大和田排水機場から大量の排水が行われるため、流れが逆向きに変わり、印旛沼から花見川へと水が流れます。この流れが逆になる現象から、「逆水橋」という橋が八千代市に存在します。

大和田排水機場

大和田排水機場は、八千代市村上に位置するポンプ施設で、1966年に完成しました。毎秒最大120立方メートルの揚水能力を備えています。当初、印旛沼の水を自然流下で排水する計画もありましたが、勾配不足や土木工事の困難さから、揚水ポンプを設置する方式が採用されました。

印旛沼の水位調整のために放流が必要となるのは年に数回程度ですが、水質悪化を防ぐため、「印旛沼流動化放流」として、年に数十回程度の放流も行っています。

花見川について

大和田排水機場から東京湾側は花見川と呼ばれます。かつて掘削工事が困難であった場所も、現在は緑豊かな渓谷のようになっています。大潮や台風による海面上昇を防ぐため、天戸と長作には制水門が設けられています。花見川の下流部は「検見川」とも呼ばれます。

印旛放水路の歴史

花見川は、もともと小さな川でしたが、江戸時代から印旛沼の洪水対策と干拓のために、勝田川や高津川などの水系と結ぶ疏水工事が繰り返されました。しかし、これらの試みは全て失敗に終わりました。戦後になり、新たな設計で放水路が起工され、1969年に現在の印旛放水路が完成しました。

この放水路の完成に伴い、花見川水系は利根川水系に編入され、一級河川に昇格しました。

近年では、河川敷の不法占有や占拠が問題となっており、2016年には179件もの不法占有が確認されています。特に中国人による占有が増加していると報告されています。

周辺環境

印旛放水路の護岸には、ほぼ全線に渡り、人や自転車専用の遊歩道やサイクリングロードが整備されています。管理主体は3分割されており、印旛沼自転車道、新川遊歩道、花見川サイクリングロードとしてそれぞれ管理されています。2021年5月にはほぼ全線が舗装され、より利用しやすくなりました。

支流

花見川に流入する河川

勝田川
高津川

新川に流入する河川

桑納川
神崎川

関連情報

利根川放水路
印旛沼開発の事業
* 独立行政法人水資源機構千葉用水総合事業所

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