危険な年

『危険な年』（原題：The Year of Living Dangerously）は、1982年に公開されたオーストラリア映画であり、ピーター・ウィアーが監督を務めました。物語の舞台は1965年のインドネシア。スカルノ大統領の統治末期、政治的な混乱が深まるジャカルタで、オーストラリア人ジャーナリストと英国大使館の秘書が運命的な出会いを果たし、激動の時代に翻弄されていく姿を描いています。

主人公は、オーストラリアの放送局から特派員として派遣されたガイ・ハミルトン（メル・ギブソン）。ジャカルタに到着した彼は、他の外国人記者たちと出会い、その中にいたのが、謎めいたフリーカメラマン、ビリー・クワン（リンダ・ハント）でした。クワンはハミルトンに好意を抱き、共産党幹部への独占インタビューをセッティングします。そのスクープ記事はハミルトンの評価を高める一方、彼はホテルのプールサイドで、英国大使館のヘンダーソン（ビル・カー）と秘書のジル・ブライアント（シガニー・ウィーバー）を紹介されます。

ジルは2週間後にロンドンへ帰国予定でしたが、ハミルトンは彼女に強く惹かれていきます。しかし、街では反体制デモが頻発し、社会不安が高まるばかり。取材に出かけたハミルトンは、クワンの助けを借りながら、インドネシアの貧困と混乱を目の当たりにし、心を痛めます。ある日、ハミルトンは運転手のクマールに連れられ、ジャワの村へ行きます。そこで、クマールと妻が共産党員であることを知らされます。

物語は後半に入り、クワンの行動が変化していきます。スカルノ政権を支持していたクワンは、子供の死をきっかけに、体制批判へと転じます。そして、警官隊に追われたクワンは、ホテルの窓に横断幕を掲げ、壮絶な最期を遂げるのです。

クワンが残した情報ファイルを守るため、ハミルトンとジルは彼の家へ向かいます。追っ手から逃れる中、二人は空港での再会を約束します。しかし、その直後、スカルノ失脚のニュースが世界を駆け巡ります。共産党のクーデター失敗を機に、軍部が政権を掌握し、共産党員狩りが始まります。戒厳令が敷かれる中、ハミルトンは検問を突破し、ジルとの再会を果たし、物語は幕を閉じます。

この映画の特筆すべき点は、リンダ・ハントが男性役のビリー・クワンを演じ、アカデミー助演女優賞を受賞したことです。また、第41回ゴールデングローブ賞にもノミネートされ、第36回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にも出品されました。

『危険な年』は、激動の時代を背景に、愛と政治、そして人間の複雑さを描いた作品として、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

主な登場人物

ガイ・ハミルトン（メル・ギブソン）：オーストラリアの放送局から派遣された特派員。
ジル・ブライアント（シガニー・ウィーバー）：英国大使館の秘書。
ビリー・クワン（リンダ・ハント）：フリーのカメラマン。
ピート・カーティス（マイケル・マーフィー）：ワシントン・ポストの記者。
ウォーリー・サリヴァン（ノエル・フェリアー）：ヘラルド紙の記者。
コロレル・ヘンダーソン（ビル・カー）：英国大使館員。

受賞・ノミネート

第56回アカデミー賞：助演女優賞（リンダ・ハント）
第41回ゴールデングローブ賞：助演女優賞（リンダ・ハント）ノミネート
* 第36回カンヌ国際映画祭：コンペティション部門出品

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