即興曲/愛欲の旋律

即興曲/愛欲の旋律

1991年にイギリスとフランスの共同制作で生まれた映画『即興曲/愛欲の旋律』（原題: Impromptu）は、19世紀フランスの著名な女流作家ジョルジュ・サンドと、ポーランド出身の天才音楽家フレデリック・ショパンという歴史上の二人の関係にインスパイアされた作品です。特に、彼らが田舎で共に過ごした時期、そしてその後に訪れる別れに至るまでの逸話から着想を得ています。

物語の中心は、強い個性を持つジョルジュ・サンドと、繊細な気質のフレデリック・ショパンとの間の情熱的な愛と葛藤です。映画では、彼らの関係性を彩る周囲の人々として、当時のパリの文壇や音楽界で名を馳せたフランツ・リスト、アルフレッド・ド・ミュッセ、マリー・ダグー、ウジェーヌ・ドラクロワといった実在の人物たちが登場します。ただし、彼らが滞在する宿屋の夫婦など、物語を構成するために創作された架空のキャラクターも含まれています。

この作品は、ブロードウェイで高い評価を得たミュージカル『ジョージの恋人』（ジョルジュ・スーラの創作活動を題材にしたスティーヴン・ソンドハイム作品）を手掛けた主要スタッフが再集結したことでも注目されました。そのミュージカルを演出したジェームズ・ラパインが本作でもメガホンを取り、さらに同作で主演を務めたマンディ・パティンキンとバーナデット・ピーターズが、それぞれアルフレッド・ド・ミュッセ役とマリー・ダグー役で出演しています。

華麗なキャストが集結した本作ですが、制作会社の経営破綻という不運に見舞われ、世界的な劇場公開が危ぶまれる事態となりました。結果的に、多くの国で限定的な公開や、劇場公開を経ないソフト化といった形でのリリースとなりました。日本国内においても、劇場での上映は実現せず、直接VHSビデオソフトとして販売・レンタルされるに留まりました。

主要キャストは以下の通りです。

ジョルジュ・サンド／オーロラ：ジュディ・デイヴィス
フレデリック・ショパン：ヒュー・グラント
フランツ・リスト：ジュリアン・サンズ
アルフレッド・ド・ミュッセ：マンディ・パティンキン
マリー・ダグー：バーナデット・ピーターズ
ウジェーヌ・ドラクロワ：ラルフ・ブラウン
ダントン公爵：アントン・ロジャース
ダントン公爵夫人：エマ・トンプソン
ジョルジュ・サンドの母：アナ・マシー
フェリシアン・マルフィール：ジョージ・コラフェイス

制作会社の問題によって広く知られる機会が限られた作品ですが、歴史的な人物たちの人間ドラマを描いた一作として、一定の評価を得ています。

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