卵母細胞

卵母細胞（らんぼさいぼう、英語では oocyte）は、メスの生殖細胞の一種です。これは、減数分裂という特別な細胞分裂を経て、最終的に受精可能な卵子となる細胞の前段階にあたります。成熟した細胞である卵子を指す ovum（複数形は ova）とは区別して理解する必要があります。

卵母細胞はどのように発生するのでしょうか。まず、卵原細胞（卵祖細胞とも呼ばれます）が有糸分裂を繰り返して数を増やします。その後、これらの細胞が大きく成長することで卵母細胞が形成されます。

卵母細胞は減数分裂を進めるにつれて、その状態によって異なる名称で呼ばれることがあります。最初の減数分裂（第一減数分裂）を開始する前の状態にある卵母細胞を一次卵母細胞と呼びます。第一減数分裂が完了した後の細胞は、卵娘細胞（らんじょうさいぼう）と呼ばれる状態になります。この第一減数分裂を終えた後の細胞は、二次卵母細胞とも称されます。卵娘細胞はさらに減数分裂を進め、卵細胞となり、最終的に受精能力を持つ卵子へと分化していきます。

動物の生殖においては、通常、一つの卵母細胞から最終的に機能を持つ卵子一つだけが作られます。減数分裂の過程で生じる他の細胞は、極体として小さく分離し、役割を終えた後に消滅するのが一般的です。極体は卵子と同じDNA情報の一部を持ちますが、細胞質などが極めて少なく、受精可能な卵子としては機能しません。

卵母細胞の減数分裂は、途中で一時停止する非常にユニークな特徴を持っています。特に、第一減数分裂の複糸期（ディプロテン期）で一度停止し、卵核胞（germinal vesicle, GV）と呼ばれる核の状態を保ちます。この停止期間は動物種によって大きく異なり、マウスでは数ヶ月ですが、ヒトの場合、女性が思春期を迎えてから排卵するまでの間、実に数年から数十年にわたってこの状態を維持することがあります。

減数分裂が再開された後も、再び特定の段階で停止することが一般的です。この二度目の停止のタイミングも動物の種類によって様々です。例えば、ゴカイのような環形動物や多くの軟体動物では、第一減数分裂の前期で停止します。尾索類、ヒトデ、多くの昆虫、環形動物のツバサゴカイでは、第一減数分裂の中期で停止します。両生類、硬骨魚類、そして多くの哺乳類では、第二減数分裂の中期で停止します。この状態で受精を待ち、受精が起こって初めて第二極体が放出され、減数分裂が完了します。一方、ウニのように、減数分裂が完全に終了してから受精する場合もあります。

このように、動物種によって減数分裂の停止・再開のタイミングが異なるため、特に受精前の、一般に「卵子」と呼ばれている細胞の多くは、厳密には減数分裂が完了する前の卵娘細胞の状態であると言えます。

哺乳類の場合、十分に成長した卵母細胞は、それを包む卵胞から取り出されるなどの外部からの刺激を受けると、一時停止していた成熟分裂（減数分裂）を再開する性質を持っています。

関連項目

* 哺育細胞

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