厚姫

厚姫（あつひめ）の生涯

厚姫、またの名を阿津姫は、1759年4月16日生まれで、福岡藩の第6代藩主黒田継高の十四女です。彼女の母親は鷲尾隆照の娘である昭月院であり、厚姫は「糸」という名前でも知られていました。彼女は「玉台院」という戒名を持ち、その美しさは透き通るような肌で評判でした。

縁談と独身生活

厚姫は12歳の時、公家の醍醐冬香との婚約が持ち上がりました。しかし、結納が近づくにつれ、冬香の持病が悪化したため、やむを得ずこの縁談は取りやめとなります。その後、冬香は22歳で亡くなり、厚姫は26歳で亡くなるまで独身を通しました。彼女の生涯は多くの人々に記憶され、特にその運命は神秘的とされ、後の世に語り継がれました。

墓石の逸話

厚姫の遺骸は、福岡市にある圓應寺に埋葬され、彼女の墓石もそこに共に安置されていました。しかし、戦後の混乱の中で墓石が盗まれる事件が発生し、その行方が不明となりました。この墓石は五輪塔という形式であったのですが、泥棒たちにはその形状が石灯籠のように見えたのか、持ち帰られることになりました。

その後、この墓石を自宅の庭に配置した家系には不幸が続き、すぐに途絶えてしまったという噂が広まりました。人々は、これは厚姫の祟りなのではないかと噂し、墓石を寺に戻してもらうのが最も安全だと考えました。そして、奇跡的に厚姫の墓石は亡くなってから200年目に圓應寺に戻ってきたのです。このエピソードは、当時の西日本新聞や学研の月刊ムーにも取り上げられ、多くの人々の関心を引きました。

神格化と供養

厚姫は光雲神社にて神格化され、黒田重隆、職隆、忠之とともに、祭神の一人として祀られています。なぜ彼女が神格化されたのか、その詳細は不明ですが、多くの神話や伝説に彩られた彼女の生涯は人々に忘れられていません。

彼女の墓石には「栴檀香風」という言葉が刻まれており、この言葉は法華経に由来しています。「栴檀香風、悦可衆心」という言葉は、文殊菩薩が人々の心を楽しませる教えに由来するものです。

毎年、8月16日は「光姫忌」として厚姫の供養が行われ、多くの人々が彼女のことを思い出し、祈りを捧げています。厚姫の名前は、彼女が生前受けた崇敬の証でもあり、彼女の存在は今もなお人々の心に生き続けています。

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