原喜彦

原 喜彦（はら よしひこ）氏は、1964年2月11日生まれ、新潟県白根市（現在の新潟市南区）出身の元アマチュアレスリング選手であり、現在は高等学校の教諭を務めています。

レスリングとの出会いと学生時代

新潟県立巻農業高等学校（現：新潟県立巻総合高等学校）に進学した原氏は、ここでレスリング部に入部しました。しかし、高校時代には目立った実績を残すことができず、大学進学にあたっては、推薦入学の機会は限られていました。それでも、努力の末に日本体育大学体育学部の推薦を受け、入学を果たします。

大学では、同世代の赤石光生氏（日本大学）らをライバルとして意識しながら、厳しい練習に打ち込みました。その懸命な研鑽の結果、原氏は国内のトップレベルで活躍する選手へと成長を遂げます。

全日本選手権での活躍とオリンピックへの道

大学で才能を開花させた原氏は、全日本レスリング選手権大会において輝かしい実績を残しました。1988年大会からは、男子フリースタイル74kg級で前人未到の5連覇を達成し、国内におけるこの階級の第一人者としての地位を確立しました。

大学卒業後も、日本体育大学に研究員として籍を置き、競技を続けました。そして、1988年のソウルオリンピックに男子フリースタイル74kg級の日本代表として選出されます。メダル獲得も期待されましたが、惜しくも5回戦で敗退しました。

教職への転身と二度目のオリンピック

ソウルオリンピック後、原氏は故郷である新潟県に戻り、県の職員として公立高等学校の体育教師となりました。教職に就いてからも競技生活を継続し、新潟県立新潟北高等学校に在職中の1992年、再びオリンピック代表の座を掴み取りました。バルセロナオリンピックへの2大会連続出場です。出場階級はソウルと同じ男子フリースタイル74kg級でした。

バルセロナ五輪での悲劇

バルセロナでは、原氏はメダル候補として期待され、順調に勝ち進んでいました。しかし、5回戦終了後に定められた規定の計量時間内に体重測定を受けることができず、失格の裁定が下されるという、予期せぬ事態に見舞われます。

この失格は、原氏自身の体重超過やルール違反によるものではなく、日本選手団の監督・コーチの誤った認識や指示の不徹底に起因するものでした。懸命な努力でオリンピックの舞台までたどり着きながら、自身に責任のない形で夢を絶たれたこの出来事は、世間の大きな同情を呼び、「悲劇のヒーロー」として広く知られることとなりました。

この不手際に対して、日本選手団の役員であった笹原正三氏や平山紘一郎氏らは、バルセロナまで応援に駆けつけていた原氏の両親や妻に対し、直接謝罪を行ったとされています。

引退後と現在の活動

バルセロナオリンピックでの失格を機に現役を引退した原氏は、その後も教育者として、そしてレスリング指導者として活動を続けています。配属された新潟県内の高等学校（新潟県央工業高等学校など）においてレスリング部を新たに設立するなど、競技の普及と後進の指導に尽力しています。

プライベートでは、新潟放送アナウンサーの石塚かおり氏と結婚しています。

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