原始惑星状星雲

原始惑星状星雲(げんしわくせいじょうせいうん、Protoplanetary Nebula; PPN)は、太陽の数倍程度の質量を持つ恒星が、その生涯の末期に漸近巨星分枝(AGB)段階を終え、美しい姿の惑星状星雲へと進化する直前の移行期にあたる天体です。宇宙空間に放出されたガスや塵からなり、特に強い赤外線を放射しています。

名称の由来

「原始惑星状星雲」という名前は、「惑星状星雲が形成される前の段階」を意味しますが、「原始惑星系円盤」とは全く異なる天体です。この名称は、初期の天文学者が惑星状星雲を惑星のように丸く見間違えたことに由来し、その名残として使われています。この段階の星は「post-AGB星」とも呼ばれます。

進化の過程

誕生

恒星がAGB段階の終盤に達すると、大量の外層ガスを恒星風として放出します。この質量放出により、中心核が露出し始め、表面温度が急速に上昇します。外層のガス放出がほぼ終わり、中心星の温度がある程度（約5000ケルビン以上）に達すると、原始惑星状星雲の段階が始まります。

原始惑星状星雲の段階

この段階の中心星は温度が上昇し続けますが、周囲のガスを電離させるほどはまだ高くありません。特徴的なのは、中心星から放出される非常に高速なガス流が、しばしば両極方向に強く噴出することです。この高速流は、AGB段階でゆっくり放出されたガスと衝突し、それを外側へ押し広げます。この原始惑星状星雲段階での物質放出が、後の惑星状星雲の非球対称な形（双極形など）を決定する上で重要であることが分かっています。初期には球対称だった星雲が、両極への高速流によって次第に軸対称な形に変形していきます。両極に伸びるガス流の先端には、衝撃波面が観測されることもあります。

終焉

原始惑星状星雲の段階は、中心星の温度が約3万ケルビンに達するまで続きます。この温度に達すると、中心星から強力な紫外線が放出され、周囲のガスを電離して輝かせます。これにより、原始惑星状星雲は輝線星雲である惑星状星雲へと変化します。この移行はおよそ1万年程度で完了します。ただし、周囲のガス密度が非常に高い場合は、紫外線が遮られて電離が進まず、「怠け者の惑星状星雲」と呼ばれる非典型的なケースになることもあります。

近年の研究

原始惑星状星雲で見られる極めて高速なガス流や双極構造の形成メカニズムは、現在の天文学における重要な研究課題です。単一の星からの恒星風だけでは説明が難しいため、中心星の周囲に形成された「降着円盤」が関与している可能性が注目されています。特に、中心星が連星系をなしている場合、連星間の相互作用によって降着円盤が形成され、そこでの磁気流体力学的なプロセスを通じて、高速な双極ジェットが生まれるというモデルが研究されています。

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