原子爆弾解体新書〜ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム

U2 - 原子爆弾解体新書〜ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム

U2の11枚目のスタジオ・アルバム『原子爆弾解体新書〜ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム』（How to Dismantle an Atomic Bomb）は、2004年にリリースされ、2006年のグラミー賞で最優秀アルバム賞と最優秀ロック・アルバム賞を受賞した、彼らの代表作の一つです。

概要

アルバムタイトルは、ボーナストラック「Fast Cars」の歌詞の一節から取られています。「Bomb」は、ボノの父親であるボブ・ヒューソンを指しています。

当初、プロデューサーにクリス・トーマスを迎えましたが、満足のいく結果が得られず、スティーブ・リリーホワイト、ブライアン・イーノ、ダニエル・ラノワ、フラッド、ジャックナイフ・リー、ネリー・フーパーといった多数のプロデューサーを起用し、完成に至りました。

エッジのギターが唸り、アダムとラリーのリズム隊が躍動するロックアルバムであり、ボノは当時「ファーストアルバムのつもりで作った」「The Whoの『Who's Next』を意識した」と語っていました。また、U2のルーツであるBuzzcocksやSiouxsie and the Banshees、Echo & The Bunnymenなどのバンドや、Black Rebel Motorcycle ClubやYeah Yeah Yeahsといった当時のバンドにも言及していました。

セールスと評価

アルバムは900万枚を超えるセールスを記録し、グラミー賞を多数受賞するなど、商業的にも批評的にも大成功を収めました。日本でもU2のアルバムとして最高の売り上げを記録しています。

しかし、ボノ自身は「曲は最高なのに部分が全体を超えていない」と語り、音楽評論家のジョン・ウォーターズからは「この20年もの間トップの座にあり、そこから滑り落ちまいとしているバンドによる、これといって特徴のないアルバム」という厳しい評価もありました。この頃からボノの政治活動が本格化し、レコーディングを休みがちだったことも影響しているかもしれません。

アルバム制作中には、フランスでサンプルCDが盗難されるという騒ぎもありました。

シングル曲「ヴァーティゴ」と「オリジナル・オブ・ザ・スピーシーズ」は、iPodのテレビCM曲として広く知られています。

グラミー賞獲得歴

最優秀アルバム賞（2006年）
最優秀ロック・アルバム賞（2006年）
最優秀楽曲賞 - サムタイムズ・ユー・キャント・メイク・イット・オン・ユア・オウン（2006年）
最優秀ロックパフォーマンス・グループ部門 - ヴァーティゴ（2005年）
最優秀ロックパフォーマンス・グループ部門 - サムタイムズ・ユー・キャント・メイク・イット・オン・ユア・オウン（2006年）
最優秀ロックソング部門 - ヴァーティゴ（2005年）
最優秀ロックソング部門 - シティ・オブ・ブラインディング・ライツ（2006年）
最優秀短編ミュージックビデオ賞 - ヴァーティゴ（2005年）

収録曲解説

ミラクル・ドラッグ
U2のメンバーの母校の同窓生で、詩人・作家のクリストファー・ノーランについての曲。脳性麻痺を抱えながらも、母親の献身的な介護と、特製のコンピューターとキーボードによって文才を開花させ、アイルランド最高の文学賞を受賞しました。
「With or Without You」と同じコード進行が使用されています。「All That You Can't Leave Behind」のアウトテイク「Levitate」の一部も使用されています。
ラヴ・アンド・ピース・オア・エルス
「All That You Can't Leave Behind」のアウトテイク。
ア・マン・アンド・ア・ウーマン
エンジニアがミキシングしていたところ、ボノが気に入り、ベースギターを手に取り歌い始めたことから生まれた曲。
エッジが弾いているアコースティック・ギターは別の曲から持ってきて繋ぎ合わせたもの。
ボノは「夏のニューヨークでポーチに座っているようなサウンドだ。僕はThe Clashとマービン・ゲイを一つに繋ぎ合わせてみたかったんだ」と語っています。
曲のテーマは女性に対する忠誠とロマンスの再発見。
クラムズ・フロム・ユア・テーブル
ボノとエッジが酔っ払った状態で書いた曲で、最貧国が先進国に経済援助を求めて平身低頭しなければならない状況への怒りが込められています。
ワン・ステップ・クローサー
「All That You Can't Leave Behind」のアウトテイク。
ボノが父親のために作った曲で、タイトルは、ボノがノエル・ギャラガーに「（瀕死の）父親は神を信じていると思うかい？」と尋ねた際、ノエルが「（神というものを理解できるところへ）一歩近づいているじゃないか」と答えたことに由来します。
ヤハウェ
エッジが以前から構想を温めていた曲で、最初のテイクでボノがヴォーカルパートを付け加えたことで発展しました。
ファスト・カーズ
英国盤・日本盤のボーナストラック。

評価

ローリングストーン誌、アンカット誌、スピン誌など、数多くのメディアで年間ベストアルバムに選出。
* 2006年のグラミー賞で最優秀アルバム賞、最優秀ロック・アルバム賞を受賞。

『原子爆弾解体新書〜ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム』は、U2の音楽的な進化と、ボノの父親への想いが込められた作品として、長く愛され続けています。

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